V 未練たらしい俺はまるでストーカーの如く銀時を見張った。 もしかしたら、幸せそうな銀時を見れば少しは諦めがつくかと感じたからだ。 だが、おかしな事に銀時の側にアイツは居なかった。何故だ?両想いになったんじゃないのか?互いに想いを確認し合ったんじゃないのか? 激しい違和感を感じながらも声が掛けられない。 「・・・・・土・方ぁ」 泣きそうな顔で携帯を見詰める姿。流れ落ちた雫が、キラリ光った。 ワケが分からなくて、銀時にあんな顔をさせる土方がムカついて。俺は土方の周辺を探った。 って、どういう事だよ。なんで婚約してんだ?なんで銀時の側に居ねぇんだよ? これじゃぁ俺が振られた意味ねぇじゃんか。 再び銀時を自分に振り向かせようと考えたが、『好きだよ』アイツに囁いていた声が耳にこびりついて離れない。俺じゃぁダメなんだ。俺じゃ銀時を幸せにしてあげれない。悔しいけどアイツじゃなきゃ・・・・・ダメなんだ。 やるせない気持ちに打ち拉がれる。けれど暗く悩むなんて性に合わねぇ。俺は義父の会社に脚を向けた。 「どうしたんだ?」 突然訪ねて来た俺に驚く義父。 「お願いがあります」 深く頭を下げると、初めて俺は義父に頼み事をした。 「本気で言ってるのか?」 心底驚いた表情の義父。 無理もない。俺が変な頼み事をしたからだ。 「すみません。無理な事を言い出して」 弱々しく謝ったが 「分かったよ。初めて息子が頼み事をしてくれたんだ。好きにしなさい」 優しく微笑まれ、義父の心の広さに驚いた。 「ありがとうございます」 深々頭を下げると俺は会社を去った。 義父に俺が頼んだ事。ソレは今俺が任せられている子会社2つを捨てて、その代わり新しい会社を自分の力で作り直す事。実際、子会社は捨てるのではなく譲るのだけど。 俺の会社2つと土方を交換して貰う。無理な申し出だが、試してみない限り完全に無理だとは言い切れない。 初めて本屋で会社経営の本を買い漁り帰宅した。新しい会社を立ち上げるには物凄く沢山の知識も必要だ。学校の勉強も平行して勉強した為、脳がフル活用させられた。 勉強の息抜きはやはり銀時の見学で。って俺完全なるストーカーだな。 寂しそうに肩を落とす姿を見て、早く笑わせてやりたい。そう思わずにはいられなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |