1. 初めて逢ったのは、入学式。 新入生代表の挨拶で壇上に上がった瞬間に一目惚れした。 2回目は、昼休み。 偶然廊下で擦れ違った。 3回目は、放課後。 集団で暴行されていた俺を見て、アイツは何食わぬ顔して通り過ぎた。 アイツと俺の接点はゼロ。 話した事も、近付いた事もない。 唯、同じ学校に通っている、同学年の生徒。 そう、唯、それだけ。 顔・スタイル・運動神経だけでなく、頭も良い。 性格は、接点が無いから分からないが、常に沢山の仲間に囲まれているから、悪くはないのだろう。 話してみたい。 側に行きたい。 視界に入れて欲しい。 仲良くなりたい。 最初は唯の憧れ。 それが恋愛感情に変わったのは 「ねぇ、ソレ合意でやってんの?」 初めて近くで声を聞いた瞬間。 輪とした、綺麗な声。 声まで格好良いなんて、ほんっと狡い。 この神に恵まれ過ぎている位綺麗な人に、もっと近付きたい。 「もっと危機感持てよ。お前綺麗な面してんだから」 少しの呆れが含まれていたけど、笑顔を向けられ 「……………っ」 「どうした?」 赤面した。 その後すぐアイツは、誰かに呼ばれて側を離れた。 ほんの数分の事だったけれど、俺には、物凄く長くてキラキラした時間に思えた。 『ヤッバ、スッゲェドキドキしてる』 収まらない胸の鼓動。 『また話したいな』 初めて話せたばかりなクセに、もう次の機会を期待した。 その日、憧れの人から、好きな人に昇格したアイツ事、土方。 仲良くなりたい、切に願っていたのに。 一年の夏休み、英国に知り合いが居るからって理由で留学。 折角出来た接点も虚しく、土方は俺の前から姿を消した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |