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V.温もり【銀時SIDE】1
『・・・嘘・・・・』
高校初日、クラス分けの紙の前
『晋助』
俺は凍り付いた。

逢いたくて堪らなかった人。
けれど同時に、逢うのが怖くて堪らない人。
突然の引っ越し以来一度も逢っていなかった晋助。
どんなに探しても逢えなかった日々。
まさか、高校で逢えるとは思わなかった。
『逢いたいけど、怖いな』
不安と期待に騒いだ心。
だが、避けられているのか
『逢いたいのに』
俺は晋助に出逢えなかった。
もう晋助は、俺に逢いたくないのかな?
俺はまだ、こんなにも逢いたいよ?
逢いたい。


顔さえ見れずに過ぎ行く時間。
入学して2ヶ月も過ぎた。
これはもう神様が逢っちゃダメって言ってるのかな?
晋助のクラスに行けば、多分逢える筈。
けれど、俺は行かなかった。
どうせなら、偶然遭遇とかが良い。
だって、逢わなくなってもうかなり経つ。
忘れられているかもしれない。
嫌われてるかもしれない。
逢いたくて死にそう。
だけど、それ以上に・・・・・・・・逢うのがとてつもなく・怖い。
怖いんだ。

八神に強姦されて以来、他人に触られるのが、見られるのが、声を掛けられるのが、とても怖くなった。
人は皆優しいけれど弱いから、どんな窮地でもマズは自分の保身を考える。
あんなに泣き叫び助けを求めたのに、誰1人助けてくれなかった現実。
唯一の心の救いさえ、目の前から消え去った。
あれ以来、俺はおかしくなってしまった。
湧かない食欲。凍り付いた表情。
もう何も感じたくない。
晋助以外に抱かれた身体なんて・・・価値がないよ。
俺なんて・要らない。


帰宅後、暗い沈んだ気持ちのまま、無心で外に出た俺。
ザァァアアアアァァァ、通り雨が降って来た。
風邪引くかもしれないが、雨宿りはしなかった。
なんかどうでも良い。
ふらり向かったのは、昔の晋助のアパートの近く。
もう此所に晋助は居ない。
けれど、此所に来れば少し楽になる心。
逢えなくても、想い出に浸れるんだ。
目を閉じて
『晋助』
全神経を想いに馳せる。
いつも思い出すのは、一度だけ交わした幸せな口付け。
甘くて、物凄く嬉しくて、本当に幸せだった。
ゆっくり瞼を開けると、俺は晋助のアパートから離れた。
行き先なんてない。
唯フラフラ適当に歩くだけ。
今日の分の予習復習も終わった。
家に居ても、暗く落ち込むだけだから。

軽く歩き疲れて座った公園のブランコ。
誰も居ない公園を見詰めた。
『え?』
突然遮られた雨。
『何?』
ゆっくり振り返ると
『誰?』
物凄く綺麗な人が、傘を差してくれていた。
「家出か?風邪引くぜ?」
暫く放心状態の俺。
「どうした?」
覗き込まれて
『!?』
漸く気付いた。
ていうか、スッゴク格好良い。
綺麗な黒髪。サラサラしてそう。晋助と同じだ。
スッと通った高い鼻筋。
綺麗な瞳・唇・顔。
耳に心地好い声。
モテそうだなコイツ。
ジロジロ観察していると
「何か付いてるか?」
不思議そうな顔をされ、赤くなって俯いた。
何してんだよ俺。
なに初対面の人を凝視してんだよ。
スッゲェ失礼じゃんか。
「ごめんなさい」
小さく謝った。
「取り敢えず雨宿りしようぜ。行き先ないんなら、着いて来いよ」
グイッ、無理矢理引っ張られる腕。
『何処に行くんだろう?』
無抵抗に、俺はソイツに引き摺られながら歩いた。

歩く事数分
「入れよ」
促され脚を踏み入れたのは大きなマンションの一室。
『コイツの家か?』
「来い」
靴を脱いだのを確認すると、再び引っ張られた腕。
「ちょ、ええ!?」
浴室に押し込まれた。
『えっ、何が起きてるんだ?』
何故か突然脱がされ始めた服。
あっという間に2人共全裸になった。
『?』
首を傾げると
「わっ!?」
突然掛けられたシャワーのお湯。
「洗うぞ?」
『はぁ!?』
突然ワシャワシャ洗髪が始まった。
ワケが分からずポォ〜っとしている俺。
ゴシゴシ背中迄洗われ始めた。
ゆっくり前に伸びてくるスポンジ。
「じ・自分で洗うからっ」
慌ててスポンジを奪った。
『何考えてんだよ?コイツ。ワケ分かんねぇ』
自分で洗い始めた途端、自分の洗髪を始めたソイツ。
全身を洗い終わり目線を向けると
「浴槽で温まれよ」
命令された。
別に嫌じゃなかった俺は、その行為に甘えた。
『気持ち良い』
明らかに自分の家のより広くて大きな浴槽。
湯加減も心地好くて、俺は目を瞑った。
『ん?』
突然揺れた水面。
瞼を開けると
『なんで入ってくんだよ?』
ソイツが浴槽に入って来た。
「ちょっ、ぇっ、な・何?」
ヒョイッ、持ち上げられ座らせられたのは
『何コレ?』
ソイツの膝の間。
後ろから抱き締められる様な体制に
『はぁあ?』
呆然とした。
『まっ、別に嫌じゃないし良いか』
抵抗すんのが面倒臭かった俺は、そのまま体重を後ろに預けた。

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