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T.喪失【銀時SIDE】1
初恋は小学生の時。

「はじめまして、坂田銀時です」
小5の2学期、俺は少し田舎の小学校に転校した。
原因は父の左遷。
父の会社は最近経営不振で、沢山の人が解雇されている。
解雇に比べたら、左遷は遥かにマシだった。
「皆仲良くしてくれよ?」
「は〜い」
優しそうな担任と、明るくて素直そうな生徒達。

以前住んでいた所とは違い、此所は余りTVも映らないし、お気に入りの店もない。
前の学校の友達にも逢えないし、淋しいな。
少し憂鬱な気持ちのまま席に向かった。
が、
「宜しく」
席に座る直前、ふわり隣りの席の人に微笑まれ
「よ・宜しく」
心が温かくなった。

第一印象は、[スッゴク綺麗だな]だった。
彼の名前は、高杉晋助。
程良く頭も良く、運動神経もとても良かった。
余り人と馴れ合う事を望んでいないらしく、皆みたいに戯れるシーンは目にしなかった。
なのに、俺は高杉の美貌に一瞬で惹かれた。
俺にとって高杉は初恋の人。
授業中も休み時間も、無意識に見てしまう姿。
「坂田?」
不思議そうに見詰め返され
「なんでもない」
慌てて黒板に目線を向けた。




俺達の関係が少し変化したのは夏休み。

「銀時、ちょっと人参買ってきて」
カレー作りをしていた母から、おつかいを頼まれた。
「いってきます」
暇だった俺は、ついでに本でも買おうかなぁって考えながら家を出たんだ。

『さぁ帰るかな』
シレッと買った本と人参を手に持ち、帰宅した。
「ただいま」
自室に入り、本を手にした時
『高杉?』
高杉が通り過ぎる姿が窓から見えた。
『へぇ〜アイツ家近いのかな?』
興味を惹かれた俺は、
「高杉」
ガラリ窓を開き、大きく名前を呼んだ。
キョロキョロ見渡す高杉。
俺の部屋は2F。
「コッチコッチ、2Fだよ」
手を振りながらもう一度声を掛けた。
「坂田」
漸く気付いた高杉。
「暇だから遊ぼうぜ?」
ニィッっと笑うと
「なら降りて来いよ」
促された。

「いってきま〜す♪」
ご機嫌に家を飛び出すと
「ねぇねぇ何して遊ぶ?」
俺は高杉に笑い掛けた。

この日を境に、俺と高杉は毎日遊ぶ様になった。
呼び方も高杉から晋助に、坂田から銀時に変わった。
晋助が居るだけで、毎日が楽しくて充実していた。
友情が深まるにつれ、積み重なる恋情。

「・・・ん、ふっ」
3学期になってスグの放課後、俺達は自然な流れで互いの唇を重ねた。
全く沸かなかった違和感。
キスの後、軽く笑いあった。
穏やかで、楽しくて、物凄く幸せな日々。
『こんな毎日が一生続いたら良いな』
大好きな腕と愛しい香りに包まれながら、俺は幸せに浸った。

だが、簡単に手に入れた幸せは長続きしないのか
「嫌だ、晋助ぇっっ」
俺は晋助と引き離された。

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