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T-U
《・・・・・う・そぉ・・っっ》

ビックリして放心状態の俺。

理由は瑞樹が俺を襲っていた奴を殴り倒したからだ。
《大丈夫だった?柚ちゃん》
キュウゥッ、力強く抱き締められ
《どうして?》
脳内に沢山の疑問符が浮かんだ。
《実はさ》
一瞬、言いたくなさそうな顔をした瑞樹。
だが、覚悟を決めたのか事の経緯を話だした。

瑞樹の話を簡潔に纏めるとこうだ。
どうやら苛めの主犯の狙いは、元は俺だったらしい。
偶然廊下ですれ違った俺に一目惚れして、俺に近付いた所を瑞樹が止めたらしい。

って、はぁ?一目惚れってソイツ眼科行ったが良くね?

で、俺に手を出さない代わりに自分が苛められていたらしい。

という事は、苛めの原因俺じゃんかぁ。

《ごめんね瑞樹》
情けなさと悔しさで泣きながら謝ると
《当然の事をしたまでだよ?》
理解不可能なセリフが耳に入った。
《当然って?》
勿論、コテン首を傾げた。
不思議そうな俺の顔を見詰めると、
《柚ちゃんは、俺が一生守るから安心して?》
物凄く綺麗に微笑まれた。

ドクンッ!!!!!
異常な位高鳴った鼓動。

今迄可愛い弟だとしか思っていなかった瑞樹。
なのにこの瞬間、
《何言ってんだよバ・カ》
俺の中の瑞樹への想いが一気に変化した。

さっき迄、タダ可愛いとしか思っていなかった筈なのに。
『なんか俺・変だ』
瑞樹が格好良く見える様になってしまった。
人間というのはとても単純な生き物らしく、その時を境に
『ダメだ。なんかスッゴクドキドキする』
俺は瑞樹に恋をしてしまった。

で、今に至るってワケだ。
その後嫌味な位に伸び始めた身長。
今となっては198cmもある。
因みに、158cmしかない俺。
なんかスッゲェムカつく。
その無駄にデカい身長、俺に分けやがれぇ!!
雅兄も187cmあるのにさ、なんで俺だけ低いんだ?
隔世遺伝か?って、んなもん要らねぇよ全く。




「ただいまぁ」
ポスンッ。
家に着くなり、リビングのソファーに俯せになった俺。
《柚ちゃん》
耳に残る瑞樹の声。
トクトクトクトク高鳴る胸。

あの後、瑞樹が隣りに居るにも関わらず
《付き合って下さい》
5人の女の子に告白された。
なんでだよ?
モテないよりはモテた方が嬉しいけどさ、毎日告られるのはちょっとウザい。
近寄る殆どの女の子は年上が多い。
皆俺を可愛い可愛い言うし。
毎日言われるとさ、正直凹むよ?
今迄背の低かった俺。
毎日のカルシウム補給が効き始めたのか、漸く158cm迄伸びた。
なのに、どうして俺の周りは皆背が高いんだ?
小さく見えるのは俺が低いからじゃねぇ。
周りが高過ぎるんだよ。
周囲の女の子達には長身の奴等のせいで、俺が小さくて可愛くて儚くて母性本能をくすぐるらしい。
って、余計なお世話だよ全く。

《ごめんね、柚ちゃん好きな人居るから許してあげて?》
申し訳なさそうに断ったのにしつこく絡んで来た上級生。
困り果てていたら、瑞樹が謝ってくれた。
《瑞樹くんがそう言うなら》
頬を染めながら走り去った女の子達。
しつこい女の子達も瑞樹の美貌には文句が言えないらしい。
《大丈夫?》
優しく髪を撫でられながら覗き込まれる顔。
《目ぇ潤んじゃったね》
ふわり微笑まれ、トクトク鳴り響く鼓動。
《お・俺先帰るから》
紅くなった頬を隠す為、慌てて瑞樹の側から逃げた。

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