W-U いつも大切な存在は、俺の前から消える。 手に入れようと足掻けばスグ側に居たのに。 嘘さえついていなければ、素直になってれば過去は変わっていたのだろうか。 もう何が正しくて、何が間違っているのか、区別が付かない。 俺が幼き頃殺された母。 母を見殺しにした父。 最愛の妹さえ負傷し、俺は心身共に絶望を味わった。 真っ暗になりかけた心。 そんな俺を救ったのは、温かな明るい光だった。 スザクに逢い、俺は初めて友情を知った。 そして初めて、家族以外の存在を好きになった。 スザクは真っ暗な世界を照らす太陽。 俺を暗闇から救い出してくれる。 《ルルーシュ》 名前を呼ばれるだけで、見詰められるだけで満たされる心。 ふわり微笑まれると一瞬で温かな気持ちになれる。 なぁずっと側に居て? 俺とナナリーの側でずっと微笑んでてよ。 そう、ソレは完全に恋だった。 いつの間にか俺は友情だけでなく、愛情さえスザクに求める様になっていた。 ナナリーとスザクが俺の全て。 2人さえ居れば、もう 何も要らない。 3人で笑いあった日々。 物凄く幸せで、楽しかった。 なのに何故? 何故運命は皮肉なのだろう? どうして俺からスザクを奪うんだ? 戦争のせいで引き離された俺達。 どうして世の中は戦争だらけなんだ? 何故啀み合う? 何故憎しみに満ちているんだ? 俺が欲しいのはそんなのじゃない。 俺が求めてるのは、皆が笑いあって暮らせる幸せな世界。 他人に優しい世界だ。 だが大切な存在を無くし、傷付け過ぎた俺に幸せは似合わない。 俺には幸せになる資格がない。 それでも尚、もう一度スザクに理解されたい、愛されたいって願う俺。 最強に、愚かだ。 愚かな俺と崩壊しかけた世界。 救済するにはどうしたら良い? 普通にしても戦争や憎しみは減らない。 俺に出来る事は何だ? ああ、そうか。 脳内に閃いた考え。 全ての負の感情を、俺に集めれば良い。 コレなら世界を幸せに導ける筈。 確証はないが、今よりは絶対に。 俺にはもう、幸せになる権利等ない。 ならせめて、世界を幸せに導きたい。 もう充分憎まれているかもしれないけれど、今後は確実に皆に嫌われてしまう。 けれど、ナナリーが、世界が幸せならもう、ソレで良い。 なのに何故? 何故涙が出るんだ? 何故スザクにだけは理解して貰いたいって願う? 最後の最後迄、側に居て欲しい。 もう一度だけで良い。 優しく名前を呼ばれたい。 ルルーシュって、呼んで? 嘘でも良い。 好きだよって、言って? 俺を生かすも殺すもスザク次第。 俺を本当の意味で苦しめれるのはスザク、お前だけ。 まだ、愛してるんだよスザク。 涙が零れる程に。 C.C.とスザクの目の前で、亡くしていた筈の母と忌み嫌っていた父を消した。 2人は間違った形で世界を救おうとした。 兄の考えも俺とは違う。 血の繋がった親さえ、手に掛けてしまった俺。 勝ちたくて堪らなかった父に勝ったのに。 何故だろう? 何故こんなにも哀しい? 後悔してるのか? そうだな、どうせ消すのならせめてその前にナナリーに逢わせてあげれば良かった。 もう一度ナナリーを母に逢わせれば良かったんだ。 もう無理な話だがな。 俺はよく計算ミスをするな。 計画を実行した後は毎回1つは後悔が残る。 今考えている計画。 コレは俺だけの力では実行出来ない。 実行するには、どうしてもスザクの力が必要になる。 なんて俺は愚かなんだろう。 俺の心はいつまでもスザクに囚われたまま、身動きが取れない。 それ故に弱くなる。分かっているのに。 スザク、お前が欲しいんだ。 ツゥーーーッ、頬を伝った雫。 「ルルーシュ」 声を掛けられた。 「・・・・・っ!!!」 失敗した。 スザクに泣き顔を見られるなんて、一生の不覚。 「見るな」 背を背けた。 なのに 「ぇ?」 ふわり包まれた温かな熱。 「ルルーシュ」 どうして? どうして優しく名前を呼ぶ? 同情か? そんなの要らない。 なのに、振り解けない腕。 後ろから優しく抱き締められ、全てを委ねそうになった。 ずっと感じたかったスザクの熱。 聞きたくて堪らなかった優しい声。 ソレが今、こんなにも近くに居る。 スザクが側に居るだけで、俺は弱くなる。 ある意味スザクは俺の最大の弱点だな。 キュッ、強く抱き締められる身体。 全身が熱を持つ。 ドキドキドキドキ異常な位早くなる鼓動。 ダメだ、言ってはいけない。 ダメ!!! そう分かっているのに。 「スザク」 「何?」 「お前に頼みがあるんだ。お前にしか頼めない」 俺は又、スザクに頼ってしまった。 本当に愚かだ。 愚か過ぎて泣けてくる。 [前*][次#] [戻る] |