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5.土方視点
「此処が保健室な。次は音楽室行くか」
律儀に全ての教室の案内をしてくれる坂田。
担任に頼まれた時は断られると思ったが、意外と面倒見は良い方なのかもしれない。
まぁ実際一度引き受けた事は途中で投げ出したりしないし、すると決めた事は絶対最後迄やり遂げるから周囲からの信頼度も高い。
いつもは死んだ魚の様な目でヤル気等全く持ち合わせていませんって顔してるのに、やる時は真剣で真面目な表情と言動に変わるからギャップも良い。
そのせいか、人気もある。
まぁ本人は自分が人に好かれている自覚等全くなさそうだけど。

「一通りよく使う所教えたけどさ、他に気になる所ある?」
いつの間にか一周していた校舎。
あっという間に案内が終わってしまった。
ニコニコ笑いながら聞かれて、今日は機嫌が良いのか?と思った。
理由は本日まだ一度も笑顔を崩していないからだ。

俺と坂田は似た者同士故か気が合い過ぎるらしく何故か仲が悪い。
同属嫌悪ってヤツか?
行く先々で偶然会うし、好きな物も使う物もよく被る。
真似した真似してないで論争したり、先回りすんなって衝突したり、いつも些細な事で口喧嘩したり殴りあったり。
別に嫌いではない。
コイツと衝突すんの楽しいし。
ていうか、此処まで気が合うなら逆に仲良くもなれんじゃね?
互いに短気なのも原因だ。
多分これはドチラかがイラついても我慢すりゃ良いだけの話。
笑って許しあえる様になればなるようになる。
折角だからこれを機会に関係を修復すんのも悪かない。
ふわり微笑んでやると
「……………………っ」
坂田が真っ赤になった。

ん?
なんかコイツ可愛くね?
それもスッゲェ。

ジィイーーーーーッツ。
顔に穴開きそうな位見詰めると
「なっ、なんだよ?」
面白い位焦りだした。

ジロジロジロ。
不躾な位観察する。
白に近い銀髪。
充血でではない宝石みたいな赤色の瞳。
白いのに不健康に見えない肌。
細いのにガリガリではなく程好く引き締まった身体。
クルクルの天パもふわふわなワタアメと思えば可愛く見える。
うん。コイツスッゲェ綺麗で可愛い。
これはやっぱり不仲より仲良くした方が良い。
こんな極上の奴と不仲とかマジ勿体ない。
でもどうやったら仲良くなれるんだ?

うっ、とか、あぅ、とか小さくもらしながら悩んでいる坂田。
多分いつも喧嘩している俺が何も仕掛けず、伺う様に観察してくるから対処に困っているんだろう。
まぁ、記憶喪失設定な俺が突然今まで通りにいちゃもんつけても驚くだろうが。
さぁどうやって歩み寄るか、軽く悩みながら
「坂田」
口を開くと
「記憶が戻る迄大変だろうから一緒に居てやる」
今までの坂田からは絶対に聞けなかった信じられない位優しい言葉が掛けられて
「……宜しく頼む」
自然に俺は笑顔を溢した。

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