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3.土方視点
翌日
「駄目よ、車道側は歩いちゃいけません」
「ほら、此処は車通りが多いから左右気を付けて行きなさい」
有り得ない位心配性になってしまった母に手を繋がれながら俺は登校した。

母よ、俺はもう高校生だ。
そんな幼稚園児みたいな扱いは止めてくれ。手も離してくれ。
頼む、行き交う人々よ。皆見ないでくれ。
恥ずかし過ぎて死にそうだ。

何度も手を離そうともがいたが、その度強く握り返された。
で、そのまま職員室へ。

死んだ。俺マジで。

「おはようございます土方さん。朝からどうされたんですか?」
担任。頼むから視線をちょこちょこ握られた手に持って行かないで下さい。

「昨日下校途中、電信柱に頭をぶつけたらしく」
ちょっ、言わないで、恥ずいから。
車を避けて偶然後ろにあった電柱に思いっ切り頭ぶつけたとか言わないで。
俺痛い子みたいだから。

「大丈夫ですか?」
ほらぁ〜、担任が憐れんだ目で俺見てくんじゃんか。

「その時の影響か、その、記憶喪失になってしまいまして」
ちょっ、待って。
それ勘違いだから。
俺記憶失ってないって。
寧ろ嫌んなる位昨日の恥ずかしい光景覚えてますからぁ。

「え???それって大丈夫なんですか?」
大丈夫です。

「自分と私達家族の名前は分かるみたいですし、日常生活も普段と同じ様に過ごせますから多分大丈夫だとは思います」
うん。うん。

「ですが、何かあったら困りますので、クラスの生徒達にはきちんと先生から息子が記憶喪失になってしまった事を伝えて欲しいんです」
はぁあぁあ??

「分かりました。1限目の前にきちんと私から皆には説明します。土方君のことは私と生徒達でフォローしますからお母さんは安心して下さい」
「ありがとうございます。先生十四郎を宜しくお願い致します」
深々頭を下げながら職員室を出た母。
「頑張ってね」
泣きながら頭を撫でられて
「………………」
俺は固まった。

あの、母さん。
俺本当に元気なんで、記憶喪失とかじゃないんで、あの、ほんっと無いんですが?この流れ。


「大変言いにくい話なんだが、土方が記憶喪失になってしまった。色々大変だと思うが、皆早く土方が記憶を取り戻す様に協力して欲しい」

「大丈夫?土方君」
「え〜?土方君私達の事忘れちゃったの?」

いや、ちょっ、待っ、ヤバい。
これドンドン違うって言えなくなってる。
俺お前等の事忘れてねぇし、記憶消えてねぇから。

否定したいのに、皆から異常な位心配された俺は
「これから宜しくお願いします」
無意識に頭を下げていた。


って、これから俺は一体どうすれば良いんだぁ???


………………誰か教えてくれ。

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