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【Act.[-U お仕置A】

「晋助っっ」
慌てて靴を履き玄関を飛び出したが
「あれ?」
流石猫。
既にソコに猫杉の姿はなかった。
って、脚早っっ!!!

取り敢えず近辺を探すか。
「晋助」「晋助何処?」
名前を呼びながら探すが、一向に見当たらない姿。

何処に居るんだよ?
俺を1人にすんなよ。
流れる汗も気にせず、必死に走り回った。
何度も名前を呼び続けた為、痛む喉。
休む事なく探し続けたせいで疲れた身体。

「何処に居るんだよ?晋助」
気にならない位、唯々必死だった。

結局その日、俺は猫杉を見付ける事が出来なかった。



「ただいま」
声を掛けても無音な部屋。
お揃いの首輪に付いている鈴の音さえしない。
外に居ないって事は家に居るのでは?と思い、帰宅したのだ。

もしかしたら寝てるだけかもしれない。
淡い期待を持ちながら寝室へ向かったが、ソコに猫杉の姿はなかった。
あっ、ベランダかも?
それともお風呂?‖WC‖?
部屋中を探してもやっぱり居なくて。
「嫌だよ、晋助ぇ」
俺は涙を流した。


あの雨の日、猫杉に逢ってからは一度も感じた事のなかった孤独。
ただいまと帰宅して、誰かが居る喜び。
一緒にご飯を食べて、一方的だが色々話を聞いてくれて、同じ布団で寝る。
今迄一人暮らしだった自分にとって、猫杉の存在はもう、なくてはならない物になっていた。

一度知ってしまった温もり。
もう1人では寂しくて堪らない。
「嫌だ、1人は嫌だよ」
ゴシゴシ情けなく溢れて来る涙を強く拭き取ると
「いってきます」
誰も居ない部屋に声を掛け、再び家を出た。

このままじゃ嫌だ。
もう一度猫杉と一緒に、あの部屋で過ごしたい。

疲れた身体を無視して走り出した。

そういえば、公園。
猫杉と初めて会った場所を探していなかった。

そうだよ、冷静に考えたらまず先に此所を探すべきだったんだ。

急いで公園に脚を向けた。

「晋助」
……………………って、寝てるし。

漸く見付けた猫杉は、公園のベンチで寝息を立てていた。

あ〜もう心配して損した。

でも見付かって良かった。

自然と顔が綻んだ。

「晋助」
名前を呼びながら髪を撫でると、ゆっくり開けられた瞼。
開ける時、長い睫毛が揺れて綺麗だった。

「触るな」
パシンッ、払われた手。
めげずに
「嫌だ」
告げた。

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