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T-T
第ニ部【G.W. 前編】

《Act.1》

《お前の手料理食べたい》
耳元で囁かれた声。
《なら誕生日ね?》
クスリ笑って、唇を重ねた。
あの時はまさか別れるとは思っていなかった。

《別れるか?》
哀しそうに曇った顔。
優しく温かで、俺を丸ごと包み込んでくれた土方。
物凄く居心地が良くて、安心出来た。
なのに俺は土方じゃなく、晋助を選んだ。

《愛してる》
毎日囁かれていた甘い声。
今でもまだ
『土・方・・・』
耳に残っている。




桜の季節が終わって、もうすぐ5月になる。

「銀ちゃ〜んお腹空いたアルぅ〜」
只今我が家はかぁなり火の車である。
何故かって?
それは勿論収入が少ないからである。
いや、無いに等しい。
在るのは新八のバイト代だけだ。

万事屋は辞めた。
晋助に反対されたからだ。
日に日に険しくなっていく家計。
このままじゃダメだ。

こうして
「いらっしゃいませ」
俺は新たなバイトを始めた。



フリフリの白のエプロン。
レースが付きまくりの黒のワンピース。
長い黒髪のカツラ。
短過ぎるスカート。

最初この格好をした時は卒倒しそうだった。
俺は変態か?って。
だが、きちんとメイクをしてお店に出てしまえば恥じらいも消えた。

「ご注文は?」
上目遣いで尋ねる。
「ならコーヒーで」
赤く染まる客。

此所は学校から遠く離れた喫茶店。
偶然通り掛かった時に張り紙を見つけた。

[バイト急募]
問い合わせてみると、高時給。
時給\1200ってマジ美味し過ぎ。
お金に困り果てていた俺は速攻此所に決めた。

が、店内に入った俺は驚愕した。
はい・・・・・・?
客が居ない。
どうやら近所に大型のショッピングセンターが出来たせいで客足が減ったらしい。

「最近さ、売り上げが悪いからサービスを良くしようかと思って」
困った顔で店長は紙袋を取り出した。

「コレ君の制服」
って、あの。
コレ・・・メイドっぽいんですが?

渡された紙袋を見てビックリ。
中身はメイド服でした。
紙袋を渡した直後
「急いで着替えてビラ配りして来て」
渡された大量のチラシ。
どうやら採用された模様。
だが
「急いでっ!!」
無理矢理制服を渡された俺は
『バイト選び失敗したし』
ガックリ項垂れた。


約1週間後
「ありがとうございました」
毎日のビラ配りの効果が出たのか、客足が増えた。

つか、メイドっぽい格好して客のご機嫌取りしてさ。
コレじゃあメイド喫茶と大差ないんじゃ?

取り敢えずバイトの事は晋助には秘密にしておこう。
怒りそうだから。


バシャバシャバシャッッッ!!!!
念入りにする洗顔。
「銀さんってさぁ、メイクの時より洗顔の時の方が気合い入ってない?」
同じ店の女の子が不思議がる。
って、当たり前だろっ。
女装してるってバレたらヤバいんだよ、色々と。

「じゃあね〜お先ぃ」
ゾロゾロと帰って行く女の子達。
当然ながらこの店で男は店長と俺だけだ。

客寄せをしていた時は人手不足でしていた女装。
女の子の店員が増えてからは俺はウエーターの格好をする予定だった。
なのに何故だ?
《似合うから良いじゃん?》
店長の独断で今の形に収まった。

で、何故か指名率NO.1。
皆さん眼が悪いんですかぁ〜???
どう見てもタダの女装した男でしょうがっ!!
裏声使っても女の子みたいに高くないしさ。
バレバレだと思うのですが?


カランッ開いたお店の扉。
「いらっしゃいませ」
いつも通り笑顔でお出迎えした。
んが、
「!!!!!!!!」
とある客と眼が合った瞬間
『・・・・最・悪』
凍り付いた。


「銀?」
「いらっしゃいませ」
が、笑顔で接客。
「ご注文は?」
極上の笑顔を向ける。
出来るだけ平常心を保つ。
女装してるしバレないバレない。

「銀時だよな?」
「いえ、違いますが」
「なんで女装?」
「ご注文がお決まりでないのでしたら又後でお呼び下さいませ」
ペコリとお辞儀をすると、俺はバックに消えた。

「店長〜!!」
「なんだ?」
「俺帰って良い?」
涙目で尋ねる。
「無理」
今日は店員が少ないのだ。

「アレ知り合いか?」
先程俺が話した客を見ながら店長が聞いた。
「・・・・・・元カレです」
土方だった。

つか、どうして1人でこんな所に?
そう思ってると、カランッ
「ごめ〜ん、待ったぁ?」
1人の可愛らしい女の子が入って来た。

「全然」
って、土方の彼女〜!?
「すみませ〜ん」
「呼んでるぞ?」
嫌がる俺。
無理矢理店長に戻された。

あ〜あぁ、最悪。



翌日
「銀時」
土方に声を掛けられた。
偶然今日晋助は休みだ。
晋助が居る時俺達は何も話さない。
遠慮してるのかな?

「黒髪も似合うな」
・・・・・・。
「な、何の事かな?」
ヤバい。
取り敢えずしらを切れ自分。

「時給が良いのか?」
「何のお話かな?」
冷や汗が流れる。

「もしかして隠し通せてるって思ってた?」
うっ!!!
やはり無理でしたか・・・・・。

「誰にも言うなよ?」
渋々呟いたセリフ。
完全バレちゃいました。
「分かった。その代わり又行っても良いか?」
はい?
今何と?
えぇっと、聞かなかった事にしよう。
俺は何も聞いてない。聞いてなーい!!!

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あきゅろす。
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