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V-V
そして月曜日。

「高杉くんだ」
先生が
「皆仲良くするように」
とか色々言っている。
が、俺の耳には何も入らなかった。

ただ、隠された左目だけを見ていた。



1限目の休み時間
「晋助」
俺は晋助に近付いた。
「ちょっといいか?」
「ああ」
話したい事が沢山ある。
保健室へ移動した。

[出張中]
保健室の扉に貼ってあった白い紙。
此所の保健医は何故か居ない事が多い。
仕事放棄か?
まっ、元々居ないと思って此所に来たんだけどな。

無人の保健室に足を踏み入れると
「晋助左目どうした?」
恐る恐る聞いた。

「失明した」
多分原因はあの事故。
俺のせいだ。

「・・・ごめんなさい・・・・・」

謝ってもどうしようもないって分かってる。
それでも
「ごめんなさい」
謝らずにいられなかった。

「お前のせいじゃない」
優しく微笑まれ、撫でられた頬。
そのまま涙を拭われた。
泣いてどうなるワケじゃないのにな、俺。


「どうして突然来たんだ?」
晋助の親は俺に会いたくない筈だ。

「お袋が亡くなったから」
「えっ?」

パッと脳内に、優しかった晋助の母親の顔が浮かんだ。

「あの事根に持ってたのはお袋だけだったからな」
だから又逢いに来た、と抱き締められながら言われた。

思わず縋り付きそうになったが
「授業始まるから」
慌てて逃げた。

今はまだダメだ。



もう二度と逢えないと思い込んでいた存在。
でも逢いたくて。
逢いたくて堪らなかった。


《高杉に逢える迄の繋ぎでもいい。俺と付き合って欲しい》

土方と付き合う事で何度も忘れようとした。
だけどそれは無理で。
そんな存在が今、物凄く近くに居る。

なのにどうしてためらっているんだ?




2限目、俺は斜め前の土方ばかり見ていた。
多分勘の鋭い土方の事だ。
もう気付いてる、俺が悩んでいる事に。



「銀時」
昼休みになった瞬間掛けられた声。
周りはいつもの事だから何も気にしない。
だが、明らかにいつもとは違う目線を感じた。

[何故ソイツの側に居るんだ?]
鋭い目線がそう問う。
俺は敢えてその目線に気付かない振りをして、教室を出た。



辿り着いたのは科学の準備室。
いつも俺達はその日空いている教室か、屋上で昼ご飯を食べている。

「良かったな、逢えて」
思わず俺は耳を疑った。
まさか土方からこんなセリフを聞くとは想像してなかったからだ。
「別れるか?」
・・・えっ?
「俺の事は気にすんな。元々そう言う約束だったしな」
至極普通の口調で話す土方。
当たり前だって言い放つ。
なら・・・、ならどうして?
どうしてそんな顔するんだよ?
すっごく辛そうだ。

「・・土・方・・・」
そっと肩に手を触れるとガシッ、強く抱き締められた。
微かに震える肩。
泣いてるのか?土・方・・・。



その日、俺は早退した。
『俺土方の事沢山傷付けた』
寝転がって色々考え込んでいたら、いつの間にか眠ってしまった。



薄目を開けると夜空が見えた。
開け放っていた窓から、ハラハラ入って来た桜の花びら。

あの日と一緒だ。
初めて晋助を特別視し始めた日。
俺は桜の場所に向かった。

そこに居たのは晋助で。
「来ると思ってた」
微笑まれた。
「アイツと付き合ってたんだな?」
確信めいた口調。
「昼・別れた」
速答した。
「そっか・・・」
一瞬だが伏せられた目。
「又側に居ても良いか?」
聞かなくても分かってる癖に・・・・・・。
なんで聞くんだよ?

俺は答える代わりに、そっと晋助に触れた。
チュッ、奪った唇。

重なり合う熱で気付けよ、バカ・・・。

晋助の服を掴みながら
「・・・頼・むから・」
消え入りそうな声で
「もう・消えるな」
俺は囁いた。

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あきゅろす。
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