V-U 月日は流れて、俺はバイトをする事になった。 新八とお妙の両親が亡くなったからだ。 が、学生の身分ではなかなか良い報酬が貰えるバイトはなかった。 途方に暮れていた時、俺に声を掛けたのは近藤さんだった。 月35万円で、家政婦をして欲しいとの事。 最初ゴリラは姉貴を指名したが、1人暮らしの男の部屋に姉貴を働かせるのは危険な気がした。 こうして俺はゴリラ(近藤さん)の身の回りの世話をする事になった。 それと同時に万事屋として、頼まれた事は何でも引き受けるバイトを始めたんだ。 そんなある日。 俺は仕事でだが、土方と付き合う事になった。 どちらかと言えば好きだと思う。 けど俺は、どうしても晋助を忘れる事が出来なかった。 いつもの様に土方と街を歩く。 休日、2人でデートをするのは当たり前の事になっていた。 自他共に認められる位俺は土方に愛されてるし、幸せな筈だ。 それなのに、心はいつも願ってはいけない事ばかり考える。 晋助に逢いたい、と。 『アレ?』 いつもとは違う道。 「何処行くの?」 取り敢えず確認する。 「昨日偶然良い場所発見してさ」 ・・・んっ?この道順って。 「此所」 そう言って土方が連れて来た場所は、思い出の桜の木の場所だった。 「絶対お前好きだと思ったから」 一気に蘇る記憶。 『晋助・・・』 無意識に名前を口走ってしまいそうになった。 「どうした?嫌だったか?」 今にも泣き出してしまいそうな俺の顔を見て 「ううん。そんな事ないよ」 「本当か?」 土方が心配してくれた。 お前優しすぎ。 今俺違う人の事考えたんだぞ? 「大丈夫だから」 ああ、なんて俺は未練がましいんだ? もう逢えないのに。 無理矢理笑顔を作ると 「桜綺麗だな」 初めて此所に来たフリをした。 誤魔化すなんて俺、嫌な事してる。 朝一番学校で 「コレ」 桂に手紙を渡された。 おはようの挨拶前のセリフが《コレ》って、なんか微妙。 「ヅラこれ何?」 差出人が書いていない真っ白な封筒。 一体誰からだろう? 「手紙だ」 いや、ソレは見れば分かります。 「昨日偶然見掛けたからな」 『???誰の事?』 頭を捻りながら手紙を開く。 中に書いてあったのは1行のみ。 [月曜からそっちの学校に行く] 『短すぎ』 ソレ以外は何も書いていない。 俺の名前も差出人の名前もだ。 でも一瞬で 『・・晋・助』 誰からか分かった。 今日は金曜日。 あともう少しで晋助に逢える。 そう分かると、俺は有頂天になった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |