[携帯モード] [URL送信]
V-T
確か出逢いは幼稚園。
いつも一緒に居たと親に聞かされた。

特別仲の良い友達は出来るだけ同じクラスにする方針なのか。
何故か俺達は離れる迄の間ずぅっと、同じクラスだった。
自他共に認める程、俺達は依存しあっていた。
側に居るのが当たり前。
居ないと不安になる。
俺はアイツが居ないと生きていけない、とさえ感じていた。




月の綺麗な夜。
開け放っていた窓。
夜空を見上げていると、ヒラヒラ侵入してきた桜の花びら。

俺は何かに誘導される様に、外へ出た。

気が付くと、満開の桜の下。
何故か、アイツも居る様な気がして
「晋助?」
俺は桜の後ろを見た。
案の定、そこには晋助が居た。

桜の木に身体を預けて目を閉じている。
多分風が心地良くて睡魔に襲われたのだろう。
肌を撫でる様な柔らかな風が吹く度
『綺麗』
サラサラと揺れる黒髪。
時折、晋助の周りを舞う花びら。

『こんなにも桜の似合う人は他には居ない』
本気で思った。

この日から俺は、晋助を特別視し始めた。

桜の花びらを見る度思い出すのは、あの夜の美しい光景。
この時から俺は、桜に囚われてしまった。




「高杉くんは急遽、親御さんの事情で引っ越す事になりました」
梅雨入り前の曇った日。
突然、朝先生が
『ぇ?今なんて?』
教壇でそう告げた。
俺は突然の別れと、何も聞かされていなかった事のショックで
「銀っ!!」
教室を飛び出した。

晋助が追いかけてくるが、俺は走り続けた。
向かうのはあの桜の木の下。
あの日から俺は、嫌な事があるとスグ此所に来ていた。
所謂お気に入りの場所だ。

「銀時っ!!」
突然抱き締められてキスをされた。
「ごめん銀時。俺も今朝聞いたんだ、引っ越すって」
悲しそうな顔で晋助は言った。
えっ?
キスはスルーして良いんですか?
ちょっと聞きたかったが、今はそんな空気ではなかった為触れずにおいた。

父親が本社に転勤する為遠くに引っ越す事
もうなかなか逢えなくなってしまう事
色々聞かされた。
俺は唯々悲しくて仕方なかった。

毎日逢えていた、毎日側に居た晋助が居なくなる。
そんなの嫌だ!!




引越し当日。
俺は学校を休んで見送りに向かった。

まさかそのせいであんな事が起きるとは
あの日の俺は露にも思っていなかった。

「ニャア〜」
足元に居るのは1匹の小さな黒猫。
その日は何故か、朝からその猫に懐かれていた。
なんとなく晋助に似ている。
そう感じると、邪険には出来なかった。
勿論晋助の家の近くにも付いて来た。
後少しで家に着く瞬間
キキキキキィィイイイーーーッッ!!!
凄いスピードで細い道を車が走って来た。
猫が避け切れない。

『危ないっ!!』
そう思った瞬間、勝手に身体が動いていた。
猫を助ける為に俺は飛び出した。
が、
キキィ〜ッ!!
と言う凄まじい音に引かれたのは
『ぇ?』
俺ではなかった。



「キャァァァ―!!」
聞こえたのは晋助の母親の叫び声。
俺は晋助に助けられたのだ。

その後スグ晋助は病院に運ばれた。
が、俺は病室に入れてもらえなかった。

「すまないが銀時くん。もう二度と逢わないで欲しい」
晋助の父親に頭を下げられた。
俺を見る度事件の事を思い出すからだそうだ。

それから俺は二度と晋助には逢えなかった。
風の噂で晋助が失明したと聞いた。


俺のせいで視力を失った晋助。
次逢う時はもう笑いかけてくれないかもしれない。
もう逢えない。
そう思うと俺は死にそうになった。

[*前へ][次へ#]

5/34ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!