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T-W
「好きだよ」
トシはいつも俺の望むセリフをくれる。

「銀時」
名前で呼ばれるのが、こんなに心地良いなんて。

「んっ・・・」
愛されるのがこんなにも嬉しいなんて。

「大好き」
今迄知らなかった。

全部トシが教えてくれた。

だから消えないで?
ずっと側に居て?
ずっとずっと、俺を愛し続けて。
俺だけを見て?

お願い。

大好きだから。

もう・嫌わないで?




冬休み・クリスマス・お正月。
ずっと側に居た。

親達は、仲良くなった俺達を見て安心していた。
今迄はケンカばかりだったから。


優し過ぎる時間。
幸せ過ぎる時間。

いつも側で包み込んでくれる暖かな腕。

ああ、もう・依存してる。
絶対離れないでいてくれる存在。

だから、俺は油断していた。




バレンタイン当日。
俺は出来るだけ甘さ控え目のチョコを作った。
『喜んでくれるかな?』
浮かれていた俺は
『早く逢いたいよ』
トシの微妙な変化に気付かなかった。


「トシぃ〜」
笑顔でトシに駆け寄る。

「コレ甘さ控え目にしたから」
照れながら渡した。

[ありがとう]

てっきりそう言って貰えると期待してた。
が、
パンッ!!
『ぇ?』
弾かれた手。
『何?何が起きたんだ?今』
と同時にチョコが落ちた。

パリンッ!
嫌な音。

「トシ?」

怒ってるの?
どうして?
俺何か怒らせた?

「要らない」
そう言うとトシは俺の前から姿を消した。


まさか、記憶が・戻った・のか?




明らかに避けられている。
眼も合わせてくれない。
見つめると睨み付けられた。

「・・・っ!!」
嫌だ!!嫌だ!!!!嫌だっ!!!!!

バンッ!!
俺は教室を抜け出した。

向かうは屋上。
いつも愛し合ってた場所。

「トシぃ・・・トシ・・・・・・」
ポロポロと、涙が出てくる。

苦しくて、切なくて。
そして何より、寂しかった。

「逢いたいよ・・・トシぃ・・」

逢いたい。
逢ってもう一度、いつもの様に・愛してるって言って欲しかった。
優しく抱き寄せて、キスしてよ?トシぃ・・・・・。


泣いていたら
「坂田」
呼ばれた名前。
土方の声だ。

嫌、来ないでっ!
呼ばないで。
トシじゃなきゃ嫌!!
俺を嫌いな土方なんて見たくないよ。

「お前さっきなんで見てた?」
スッゴイ不機嫌そうに土方が言う。

「見てない」
速攻で否定した。
「見てただろ〜がっ」
「見てないって言ってんだろ!!」

「それにどうして、名前で呼んだ?」

何それ?
俺がお前の名前を呼んだら何か支障でもあんのか?
イチイチ聞くなよバカ野郎。

「お前じゃない」
「何言って?」

俺が見てたのは、呼んだのは土方じゃない。
あの優しかったトシだ。

「なんで泣く?」
「嫌だよ・・・トシじゃなきゃ嫌・・・」
「坂田?」
なんで居ないの?トシ。
目の前に居るのに。
こんなに迄近くに居るのに。
どうして来てくれないんだ?


「土方くん」
屋上の入り口付近から、突然聞こえた声。

視線を移すと、可愛い女の子が居た。

「あの、ちょっと良いですか?」
明らかに告白だ。

赤くなる顔。
少しはにかむ笑顔。

嫌だ!
俺以外を見ないで!!
俺以外に触らないで!!!

声にならない叫び。

俺はその場に泣き崩れた。


俺を愛してくれたトシは・・もう・・・何処にも居ない。

消えちゃった。

もう・逢えない。

・・・・逢えない・んだ・・・。



教室に戻るなり
「どうした?銀時」
「ヅラぁ・・・。俺、失恋しちゃった」
桂の前で泣いた。

情けない位ボロボロ涙が溢れる。
『最近涙腺弱いなぁ俺』



記憶を取り戻した土方は、又モテ始めた。

今迄俺を見てくれていた優しい眼が、顔が、全てが。
奪われた様な気がした。


愛されていた俺はもう存在しない。

在るのは、嫌われている俺だけ。




それから、約1ヶ月が過ぎた。

トシに逢いたい。
逢いたくて堪らない。

禁断症状を起こしかけていた。


もう限界・・・。

来てくれないのなら、逢いに行きたい。

そうだ!!
どうして早く気付かなかったんだ?

至極簡単な事だったのに。


「ちょっといい?」
階段の前を行く土方を呼び止める。

グィッ!!無理矢理引き寄せて
「坂田!?」
キスをした。

「ヤメロッ!!」
汚そうに拭われる唇。
何その態度?
マジムカつく。

やはりこんなんじゃダメか。
こんな甘い行動では、トシは戻ってこないんだね。


ならもう残る道はただ1つ。

トンッ!!!
俺は土方を突き飛ばした。

あの優しかったトシには、逢えないかもしれない。

けど、俺を拒む土方なんて見たくない。

病院に付き添いながら
『次こそは逃がさないよ?』
心に決めた。

もし次、俺を拒絶したら

土方

お前を閉じ込めてあげる。

愛してるよ。

お前は俺だけを

見てればいい・・・。

だから、トシ

お願い。

俺を

愛して・・・・・?

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