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U-T
《Act.2-1》

【ワンコな恋人】



「死ね。土方っ」
「うわぁっ、おい、何しやがるっっ!!」
突然凶器を向けられ、土方は抗議の声を上げた。

「何だよっ」
俺が何かしたか?ムスゥとした顔で聞くと
「旦那と何かありやしたねぃ?」
聞かれた問い。

正解だ。

「いやぁ〜昨日の銀時可愛かったなぁ」
思い出し笑いをし始めた土方に
「んわぁっ、土方キモッ!!」
ドン引きの沖田。

だが、何を言われても上機嫌な土方には聞こえない。

「なんかムカつく」
「ん?なんか言ったか?」
「い〜え。幻聴ですか?土方さん。病院行ったが良くないですかぁ?いや、いっそ行って入院してきて下せい。で、そのまま還らぬ人になってくれたら嬉しいです」

「は?何だソレ?」

「あっ、それより土方さんさっきのどうしやすか?」
さっきのとは天人から没収した薬品の事だ。

「んなの銀時に使うに決まってんだろ?」
何の悪びれもなく言う上司に
「旦那も可哀相に」
土方さんを選んで。
ワザと大きな声で聞こえる様に沖田は独り言を言った。


もう1つのご機嫌な理由。

それは、物凄く楽しそうな薬を手に入れたからだ。

軽く犬化させる薬。
他にも色々楽しげなのがあったが、それは次回使おう。

土方は上機嫌のまま職務を終わらせた。

いつもは鬼の副長が始終ニコニコしていた為、逆に隊員達は
「なんか今日の土方さん怖いっすね」
ガタガタ震えていた。

それに微塵たりとも気付かない土方。
周囲の心境さえ見えない位、浮き足立っていた土方は職務が終わると同時にサッサと屯所を出、万事屋に向かった。


ピンポーン。
いつもの様に呼び鈴を鳴らすが
「あれ?」
返事がない。

「入るぞ?」
鍵が掛かっていなかった為、スムーズに土方は中に入れた。

寝室に足を踏み入れると、スゥスゥ寝息を立てている銀時が居た。

「―――ったく、不用心過ぎなんだよ本当」
土方は本気で心配をした。

フワリ髪を触ったがピクリともしない。

今がチャンスとばかりに、土方は薬を口に突っ込みコクリ、口移しで水を飲ませた。

水と同時に流し込む薬。
コクン、飲み込む音がし、隣りで様子を伺う事にした。

「ん―――?んんんん――!?」
何か違和感を感じるのだろう。
銀時がうなされている様な声を出した。

ガシガシ、頭がむず痒いのか白い手がカリカリと掻く。

「ん・・・ゃぁっ、熱・いよぉ・・・・・・っ」
喘ぎに少し似た様な苦しげな声がし、土方は少し興奮した。



約5分後、
「おぉっ!!」
フワフワと白い、ヌイグルミみたいな耳と尻尾が生えた。

本物か?コレ?
土方は恐る恐る触れる。

ピョコピョコンッ。
何やらそんな可愛らしい音でもしそうな動きに
「起こすか」
起きている犬銀も見てみたい。
興味が沸いた

「銀時起きろよ」
ワザと犬耳に息を吹き掛け、囁きながら起こすと
「・・・んん・・?何か変な感じするんだけど?」
ちょっぴり不機嫌な声を出しながら銀時が起きた。


「あれ?」
目を覚ますと
「もふもふ?」
眼前に可愛い犬の肉球が見えた。

「定春?」
の割りには小さい。

グゥパァグゥパァ指を動かすと、眼前の肉球も同じ動きをした。

「・・・・・???」
寝起きでまだ完全覚醒していない為、状況を理解出来ない銀時。

「土方ぁ。コレ何?」
眠たい目を軽くゴシゴシしながら可愛らしく聞かれ
「お前可愛過ぎっっ」
思わずムギュムギュゥ〜力強く抱き締めてしまった土方。

「痛ぁっ!こぉのバカ力がぁっっ!!」
ミシミシッと骨が軋みそうな位、力強く抱き付かれ、銀時は完全に目を覚ました。

「悪い悪い。余りにも可愛かったからさ」
デレデレ言うが
「はぁ?お前何言ってんの?」
まだ自分の状況に気付いていない銀時に訝しげな表現をされた。


「銀時コレ見てみ?」
屯所から持ち出した大きめの鏡を手渡す。

「鏡?何に使うの?」
突然手渡されて不思議そうな顔をする銀時に
「いいから自分を見てみろよ」
土方は促した。

何だよもぉ〜。
面倒臭げに鏡に目を向ける銀時。

「あれぇ・・・銀さんまだ寝惚けてる?」
有り得ない姿に目を見開いた。

びっくりした表情で必死に鏡を覗き込む姿に慌てふためく犬銀も可愛いなぁ。
土方は鼻の下を伸ばしていた。

「コレどういう事?」
引きつる顔さえ可愛く見える土方は
「可愛いだろ?」
少し病んでいる。

「今日天人から貰った薬飲ませた」
サラリ言われ真っ青になる銀時。
コレ身体に毒とかないよな?

「大丈夫。軽く犬化するだけだから」
笑顔な土方に対し
「全然大丈夫じゃねぇっ!何時戻れるんだよ」
涙目に銀時はなった。

「あ・・・っ。聞くの忘れた」
何とも無責任なセリフを言われ
「戻れなかったら責任取れよっっ」
銀時は強い口調で睨み付けた。


「マサカ全身毛だらけじゃぁないだろうな」
真っ青になりながら恐る恐る服を脱ぐ。

「って、コッチ見んな」
食い入る様な視線を感じ、慌てて土方に怒鳴る。

パサリ、床に服が落ち鏡を覗き込む。
「はぁ〜。良かったぁ」
どうやら犬化したのは耳と尻尾と手足だけだった。

「土方見過ぎっっ」
溜め息混じりに銀時は呟いたが
「マジで可愛い」
土方は上機嫌。

サッと近付くと、チュゥ。耳に口付けた。

ピクンッ、動いた耳。
「ん?もしかして耳感じるのか?」
ふと、気になる事を聞いた。

「んなの分かんねぇよ」
試しに尻尾や手足等、気になる所を触ってみると
「ちょっ、んゃっ。・・・・っぁ」
ピクピク動いた身体。

「気持ち良いのか?」
不思議そうに土方が触ると
「土方っ!コレ媚薬入ってんじゃね?」
ギロリッ、銀時が涙目で睨み付けた。

「え、マジで?スッゲェ嬉しい誤算だぜ」
土方は喜んだが
「俺は嬉しくねぇよ」
銀時は悪態を付く。

だが媚薬には勝てず
「お前のせいだからなっっ!!責任取れよ?」
自ら土方の胸に顔を埋めた。

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