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『隣』
3-1
迫り来る受験。
俺と奏と阿波路は全員同じ高校に行く為、俺と奏は必死に勉強した。
一応俺達でもギリギリ着いていける様に阿波路はランクを2つ以上下げてくれたが、それでも俺達にとっては大変で、毎日勉強三昧になった。
因みにランク下げたっていっても偏差値の高い有名な進学校に変わりはないワケで、担任は本気で滑り止めやら専門学校とかも進めてきたが、俺達はそれを無視してひたすら自分達が決めた進路を変えずに頑張った。
お陰で受かったのだが
「奏?」
合格発表の日、奏に違和感を感じた。

3人で掲示板を見て喜んだ後、お祝いにカラオケに行ってその後ファミレスでも行こうって流れになって意気揚々と歩きだしたのだが、数歩進んだ時奏が振り向き、固まった。

「どうした?」
「いや、なんでもない」
そう言われたが、何かが違った。
奏はその後普通に振る舞っていたが、何をする時も何か別の事を考えている感じだった。

奏?
…………なんだ?
何なんだ?この感じ。
嫌な予感しかしない。
まさか奏、恋に落ちた?
って、まさかな。
そんなワケない。

あの日擦れ違った人の中に女の子はいなかった。
もしかして奏が好きになったのってあの学校の女の先生とか付き添いで来てた母親の誰かとかか?
って、まさかなぁ。
年の差半端ないし、ソレはないだろう。
なら、やっぱり気のせいだろう。
これは恋煩いなんかじゃない。
多分受験から解放された事からきた疲れかなんかで元気がないんだろう。
気に止めない事にした。

そうしようとしたのに
「奏?」
「ごめん。俺、もうこういうの出来ない」
奏がキスを拒絶した。

なんで?
俺の事嫌いになった?

「俺、あの日一目惚れしたんだ。だから、その、もうこういうのはその人としかしたくないって言うか、その」
一目惚れ?
誰に?
居なかっただろ?可愛い女の子なんて何処にも。
奏ばっかり見てたから見落としてたのか?

「えっと、どんな女の子?」
もしかしたら擦れ違った人じゃなくて、掲示板の近くの人だったのかな?
あの付近は数人居たしさ。

「いや、その、女の子じゃないんだ」
そっか、なら年上なのか。
お前が熟女好きとは知らなかったよ。
今度から理由付けて授業参観は休ませよう。

「分かった」
本当は嫌だったけれど、駄々を捏ねて嫌われたくない。
「もうしない」
ふわり微笑むと優しく髪を撫でた。


その日から奏は高校が待ち遠しいのか、毎日嬉しそうにしていた。
対する俺は、怖くて溜まらなかった。
奏が俺以外を好きになった。
俺としていた事を違う人にする。
俺以外にキスする奏。
触れて触れられて、その人の事を愛するのだと思うと、苦しくて、辛くて、寂しくて、悲しくて、悔しくて。
様々な醜い感情に埋め尽くされていく。

奏が遠くに行ってしまう。
こんなに好きなのに。
こんなに愛してるのに。
俺以外の人の物になってしまう。
嫌だ、そんなの嫌だ。
嫌だよ、奏。
でもそんな感情出すワケにはいかない。
必死にいつも通りに振る舞った。

心が、感情が、死んでいく。
奏が側から離れてしまう、そう考えるだけで狂いそうになる。

なぁ、奏。苦しいよ、寂しいよ。
誰の物にもならないで?

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