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『隣』
1-2
中学に入学すると、俺達は離れ離れになってしまった。
今までずっと同じクラスだったのに、皆バラバラ。
どんだけ運悪いんだよ、俺。
って、逆に今までが運が良かっただけか?

落ち込む俺とは違い、奏と阿波路はクラスで上手くいっているらしく、あっという間に俺以外の友達を作ってしまった。
俺だけが小学校に取り残されてしまった様な寂しさに囚われて、俺は無口になってしまった。

そんな俺を周囲は心配して優しくなったが、俺は余計寂しさを感じる様になった。

日直で担任に呼ばれて職員室に向かっていた時、偶然俺は奏を遠くに見掛けた。
喜んで声を掛けようとした時だった。
奏は嬉しそうに知らない奴に笑いかけた。

それは今まで俺と阿波路にしか向けられていなかった笑顔で。
親しそうに笑いあう姿を見て、奏が奪われた気持ちになった。
奏は自分だけの物ではない、分かっているのに、悔しくて悲しくて。
その日俺は職員室に行くなり体調不良だと担任に告げて早退した。



それから3日間。
俺は自室に引き籠もった。
食欲もなかったし、何もしたくなくて、唯々布団に入って落ち込んでいた。

その余りのウザさに母がキレた。
学校に行きなさい。
何でも良いから食べなさい。
勉強しなさい。
このままウジウジしてて何になるの?
母に言われてごもっともだとは感じたが、ヤル気が出ないから布団から出たくない。

ダラダラしていたら
「大丈夫?琉翔」
聞きたくて堪らなかった声が耳に入り、飛び起きた。
どうやら見かねた母が奏を呼び寄せたらしい。

「メールもLINEも返信ないし、電話も出ないから心配してたんだよ?」
あっ、そういえば電源切ったままだった。
慌てて着けたら、履歴が大変な事になっていた。

「ごめんね奏ちゃん。この子何も言ってくれないから、奏ちゃん説得して貰える?」
「良いですよ?」
「ほんっとごめんなさいね?後でお礼は沢山するから。お願いね?」
母は奏にペコペコ頭を下げると
「イテッ」
俺の頭に拳骨を落として部屋を出た。

「なんで学校来なかったの?」
優しく聞かれたが
「琉翔?」
俺は何も言わなかった。

「なんか嫌な事された?」
ううん。左右に首を振る。
「クラスで嫌な事でもされた?」
いや、寧ろ皆は優しい。
唯勝手に俺が落ち込んで暗くなっているだけ。
俺は奏しか要らないのに、奏は俺が居なくても毎日楽しそうに笑っている。
新しい友達なんて要らない。
奏が居てくれたらそれだけで良い。
俺が寂しいのは、奏が側に居てくれないからなんだ。
……なんて言えない。
言ったらウザがられるし、イタイし、キモいし、ドン引きされる。

「琉翔?」
ふわり頭を撫でられて
「…っ」
不覚にも涙が零れた。

「ごめんね。琉翔。こんなに琉翔が寂しがるなんて思いもしなかったんだ」
え?
「クラスが離れたのは寂しかったけれど、新しい友達を作るのに必死で琉翔の事放ったらかしてた。琉翔人見知りだから寂しかったんだよね?」
流石奏。
言わなくても分かってくれた。

「これからは毎日クラスに遊びに行くからさ、一緒に学校行こ?ね?」
優しく、けれど強く手を握られ
「……分かった」
俺はコクリ首を縦に動かした。


奏のお陰でゆっくり他の人達とも会話が出来る様になり、俺の登校拒否は数日で終わりを告げたのだが、俺の中で余計奏の存在が大きくなった。

奏が他の人に笑ったり話したり触れると、ズキズキ胸が痛んだりイライラする。
側に居ないと寂しい。
側に居られると嬉しい。
顔が見れるだけで、遠くから手を振られるだけで嬉しい。
クラスが離れてみて分かった。
近くに居すぎると分からなかったが、どうやら俺は奏の事が好きらしい。
独占したいと思う感情。
それは友情を越えた愛情だ。

一度気付いてしまった想いは一気に膨らんで、俺は完全に奏以外見えなくなってしまった。

そして、一緒にテスト勉強をしていた俺の部屋で、ついに俺は奏にキスをしてしまったのである。

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