[携帯モード] [URL送信]

『隣』
4.阿波路SIDE
好きだと自覚したのは、何時からだろう?
分からない。
愛しいと自覚したのは、初めて触れた時だった。

奏のファーストキスが琉翔に奪われていたのを知った時、嫉妬よりも寂しさを感じた。
自分にとって奏は一番大切な存在なのに、自分は奏の中では何番目なんだろう?等と愚かな考えが過って。
自分とは違い、奏には沢山の友達が居る。大切な人が沢山居るんだ。
俺と奏は全く違う。
本当は俺だけを見て、俺の事だけを考えて、俺の側にずっと居て欲しい。
俺以外を見ないで欲しい。

完全に依存しきっている俺にとって、奏は何物にも替えがたい大切な宝物。
誰にも渡したくないし、手放したくもない。
でも、絶対に手に入れてはならない存在。
絶対に幸せに出来ないって分かっているのに、好きになってしまった。
なんて愚かなんだろうか。
でも、もうこの想いは消せない。
俺は一生奏だけを愛し続ける。




奏が神凪を好きになった時、ツラいよりも少しホッとした気持ちの方が先にきた。
どうせ自分では奏を幸せにする事なんて出来ない。
それならせめて、誰か他の人でも良い。奏が幸せになるなら、それで良いと。
だけどソレが偽善だと言うのも分かってた。
必死にこれで諦めが付くじゃないか、と自分に言い聞かせた。

神凪に恋した日から、奏は琉翔との行為を止めた。
それは必然的に俺との行為も無くなるという事。
何故なら奏は琉翔とキスやそれ以上の行為があった後、必ず俺に抱かれていたから。

初めて奏にキスされた日、必死に自分を抑えたけれど、奏の可愛い声に、仕草に、全てを持って行かれた。
一度触れたらもう、我慢等出来なかった。
可愛くて愛おしくて、このまま、奏を殺して自分も死のうかとさえ感じた。

奏に触れられなくなって、苦しくて、何度も自分から誘おうかと考えた。
だけど、そんなの出来ない。
触れたい。愛したい。誰よりも奏の側に行きたい。
その想いが報われたのは二人三脚の話題の時だった。
奏に触れた時、奏から甘い感情を感じた。

「久しぶりにする?」
クスリ笑いながら小さく耳打ちすると
「…………っ」
軽く震えた肩。

「奏」
甘く名前を呼ぶと
「阿波路は意地悪だ」
真っ赤な顔で奏は俺を見上げた。
嗚呼、可愛くて堪らない。

琉翔に職員室に行くと告げ、華道部の部室で奏を抱いた。
久々に抱く奏は前よりも可愛くて、必死に縋り付く身体が、何度も俺の名前を呼ぶ声が、全てが愛しかった。

諦めるつもりだった想い。
だけど再び抱いてしまった事で、ソレは不可能だと実感した。
もういっそのこと、フラレるの前提で告白してしまおうか、等と愚かな考えが過ったが、やはりソレは出来なかった。
そうこうしているウチに
『……………………嘘……だろ?』
奏が神凪と付き合う事になった。

付き合い始めた事により、俺達より神凪との時間が増えた奏。
凄まじい程の寂しさと悲しみと嫉妬に襲われた。

奏に触れたい。奏の側に行きたい。
そう考えるのに、最初っから告白さえしなかった俺に、将来が決められている俺に、その資格はない。

奏、奏。
心が身体が、全身が奏を求めて苦しむ。

奏が琉翔に触れられているのは知っていたし、我慢出来た。
けれど、神凪は違う。
恋人同士になったのだから、いつか奏は神凪とキスやそれ以上の事をする筈だ。
分かっている。
それは普通の流れだって。
だけど、そんなの堪えられない。
奏が神凪に抱かれるのなんて、考えたくもない。
気が狂いそうになる。

嗚呼、そうか。
ならいっそのこと、俺以外じゃダメにしてしまえば良い。
なんでこんな簡単な事思い付かなかったんだろう?
やはり俺は馬鹿だな。
クスリ笑いながら
「明日帰り一緒に帰ろ?」
俺は奏にLINEをした。

「良いよ。なら部活休むから一緒に帰ろ〜♪」
返信と共に送られてきた可愛らしいスタンプ。

明日が楽しみだな。
一人呟くと
「愛してるよ奏」
俺は待ち受けにしている奏にゆっくり唇を落とした。

[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!