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『隣』
2.帝SIDE
昔っから俺は人間が嫌いだ。
俺は容姿に恵まれているらしく、異常な位女の子にモテた。
何もしなくても出来る勉強とスポーツ。
ちっとも楽しくなかった。
だけど、何でも出来る俺を周囲は崇め持て囃した。

何をしようにも神凪君だから安心、神凪君に任せれば大丈夫と任せられた。いや、押し付けられた。

テストで良い点取っても、スポーツで勝っても、流石神凪君と言われた。
つまり、他の人が出来ない事でも、俺なら出来て当たり前だと思われているんだ。

何だ、それ?
俺は神か?
俺だって人間だ。失敗する事があったり、挫折する事もある。
苦手な事の1つ2つなんてあって当たり前なんだ。
なのに、皆が俺を崇高するせいで、ソレを表に出す事が出来なくなった。

家族でさえ、俺に完璧を押し付けた。
唯一休める筈の家でさえ期待され、俺は人生に面白味を感じられなくなった。
何も感じない。
楽しくない。
皆が憧れる爽やかで優しい理想の人間なんて本当は存在しない。

だけど、ソレを表には出さなかった。


全ては自分の居場所を作る為。

そうしなければ、俺は生きていけなかった。

唯、それだけ。




高校受験、俺は確実に受かる進学校に進路を決めた。
自分の成績だと、まだまだ上が目指せた。
だが、もし万が一落ちたら、何を言われるか分からない。
勝手に称賛し、勝手に落胆されちゃ敵わない。

何故もっと上を目指さないのか聞かれたが、自分の成績じゃこれ位がギリギリですよ?と言えば、謙遜してるのだと勘違いされ、余計株が上がった。

どうやら俺は周囲の目が嫌だと言っている割には気になり捲ってしょうがないらしい。
まぁ、完璧な人間なんて居ないのだから仕方のない事だろう。


想像以上に簡単だった入試。
案の定学年主席で合格した。
ツマランな、本気で。

そんな退屈な人生で、俺はある人間に出逢った。

阿比留奏。
パッと見平凡だけど、よく見ると女顔で整った綺麗な顔をしている。
いつも勇那と阿波路と一緒にバカみたいに騒いでいる、クラスに1人は絶対居るお気楽で明るい奴。
毎日が楽しくてしょうがないらしく、いつも笑っている。
勉強も運動も苦手らしく、一体何が得意なんだ?と思わず聞きたくなる、俺と全く正反対の人間。

そんな阿比留は、何故か俺を惚けた目でいつも見てくる。
アレは憧れの眼差しだ。
正直うんざりしたし、ムカついた。
俺からしたら、お前の方が羨ましい。

俺には気の合う友達も居ないし、毎日が楽しいと思える気持ちもない。
恵まれ捲っているクセにこれ以上何を望む?
ムカついてしょうがない。
だから自分から話し掛けたりしなかったのに、運動会の二人三脚でペアになってしまった。
最悪だ。
本気でチェンジしたい。

仲良くしよう?と言われ、バカか?と毒づいたが、表に出せる筈がない。
「宜しくな?」
笑顔で握手をした。

それから何かと話し掛けてくる様になった阿比留。
正直ウザイ。

だけど軽いノリで告白された時思った。

コイツの側に居たら退屈しないんじゃないかって。

こうして俺は退屈しのぎと、コイツをいたぶる為、彼氏になった。

嗚呼、これから先が楽しみだ。

俺を退屈させるなよ?奏。

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