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『隣』
1-1
「んっ、ぁ、んんっ、…っぁ」
部屋に響く甘い声。

「ゃ、ぁ、ぁっ、ぁあああっっつ」
一際高い声を出して奏は熱を吐き出した。



初めは軽いキス。
年中の時偶然TVで観て、好きな人とするものだと知った。
小3になった頃、今まで全く興味がなかったのか表に出してなかっただけなのかは知らないが今まで盛り上がっていなかった恋愛話が突然クラス中に広がり始めた。
誰が一番可愛いかとか、誰が一番格好良いかとか、言い出したらキリがなくて、特に女子が喜んで恋愛話を沢山する様になって、いつの間にかクラス内で付き合い始めた奴等も数人居た。

だけど俺はまだ恋愛に興味がなくて、女子よりも友達と遊ぶ方が楽しくて、ずっと恋愛から目を背けていた。

小学校の卒業式の後、皆で遊ぼうとしたら、なんと殆どの奴等に断られた。
え?俺なんかした?
と思ったが、そうではなかった。
どうやら殆どの奴等は友情より恋愛を取ったらしく、彼女と遊びに行くらしい。

ちょっ、え?
俺寂しくね?
そう落ち込みかけた時、クイッと裾を軽く引かれた。
ん?
振り向くと
「一緒に帰ろ?」
奏が居た。

そういえば奏はいつも俺と一緒に居た。
他の奴等が恋愛に現を抜かしている間もずっと。
理想が高いのか俺と同様まだ恋愛に興味がないのか分からないが、奏が側に居てくれる。
それだけで俺は嬉しかった。

「しれっと俺を置いてくな」
デレデレしながら奏の手を握る俺の背後から聞こえる恨めしい声に
「悪い、忘れてた」
苦笑いすると
「お前はいつもそうだ」
阿波路が拗ねながら奏に抱き付いた。


俺の名前は勇那琉翔(いさな りゅうと)。
頭脳も運動神経も悪くは無いが特別良くもない普通の人間だ。
俺には幼稚園の頃から二人の幼馴染みが居る。

阿比留奏(あびる かなで)と阿波路深月(あわじ みつき)。
奏はお母さん似のせいか少しだけ中性的だが、綺麗な顔立ちをしている。
明るく活発で、誰とでも仲良くなれるタイプだ。
因みに学力は俺より少しだけ良いが、運動神経は俺より少し悪い。

阿波路は両親がモデルをしていた為か美形だが、中身が顔に伴っていない。
成績が良いから決してバカではない筈なのに、言動の全てがバカ。
残念な美形だ。

俺のイツメンはこの二人。
この二人と一緒の時は余計な気も使わなくて済むし、楽しいし、楽だ。
気軽にバカな事ばかりして、楽しければそれで良かった。
ただ一緒に居られるだけで幸せだった。

そう、

幸せだったんだ。

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あきゅろす。
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