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『隣』
6.
体育の顧問がふざけたせいで、恐ろしいコースの二人三脚が俺達1年生男子の学年競技になった。

巨大扇風機とか緩やかな凸凹道とか階段とかツルツル滑るコースとか、バラエティー番組か。
観る側は娯楽の一種かもしれないが、する方は大変だよ。
あ〜もう、最悪。

そう思った次の授業の日。

「……………………えっ、嘘?」

俺は硬直した。

アミダで決められた二人三脚のパートナー。
俺はなんと、あの憧れの神凪君と一緒になったのだ。

マジで?これ奇跡じゃね?
感動で顔を真っ赤にしながら
「えっと、よろしくね?神凪君」
俺は握手を求めた。
「嗚呼、宜しく」
初めて触れた神凪君の手。
意外と大きくて力強い。
阿波路より少し太い指。
骨ばっていて男らしい。
嗚呼、この指で触られたら、どんなに気持ち良いんだろう?

って、ん?
なんか俺最近思考危なくないか?
う〜ん?

「阿比留?」
名字を呼ばれ
「もし良かったらだけど、これから一緒に練習するんだから名前かアダ名で呼んで欲しいんだけどさ、ダメ?」
遠慮がちに尋ねる。
まぁ、嫌って言われたらその時だけど。

「なら、カナ」
え?
「カナ」
そう呼ばれボンッ!一気に真っ赤になった顔。
「えっと、他のが良い?」
「いえ、ソレでお願いします」

イケボの威力パネェ。

鼻血出そうになりました。

その後神凪君を名前の帝呼びする事になったんだけど、ヤバい。ほんっと俺幸せだぁ。


二人三脚の為に足にリボンを巻く。
肩を組もうとして互いに苦笑。
背の高さが全く違う為、俺が頑張って背伸びしまくるか帝が思いっ切り猫背にならない限り肩が並べられない。
って、帝呼び恥ずかしいな。
じゃなくて、ヤバいな。
このままじゃ俺、メッチャ迷惑掛けちゃう。

「チビでごめん」
謝ると
「これ位のハンデなら、沢山練習したらカバー出来るって」
向けられた爽やかな笑み。
もう、ほんっと爽やかイケメンだな、帝は。
モテる意味分かるよマジで。
「うん。頑張ろう」
俺は闘志を燃やした。


一緒に練習する事で、俺と帝は距離が縮まった。
体育の時だけじゃなく、休み時間も放課後も時間が合ったら話した。
楽しくて嬉しくて浮かれまくってた俺は調子に乗ってしまった。

「ねぇ帝。帝って、今彼女居るの?もし居ないんならさ、俺彼女になって良い?」
軽いノリで聞くと一瞬固まった帝。
だけど返ってきたのは
「別に良いけど?」
有り得ない返答。
「え?」
今、何て言った?

「付き合おうか?俺達」
爽やかに告げられて
「……………………………………………………うん」
熟しまくった林檎の様に真っ赤になった俺。
小さく頷いた。


まさかの返答に頭がグルグルしていた俺は、ニヤリ歪に口角を上げている笑みに気付かず、キュッと差し出された手を軽く握り締めた。




※ 次の章から、選択肢が始まります。

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あきゅろす。
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