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『隣』
1.
俺の名前は阿比留奏(あびる かなで)。
どちらかと言えば父さんよりも母さんに似ている為、少し童顔な女顔。
背も高くないし、頭も運動神経も特別良くない。
何処にでも居そうな、沢山人が居たら目立たなくて埋もれてしまいそうな平凡だ。
だけど、そんな俺にも自慢出来る事が1つだけある。
それは親友に恵まれている事だ。

俺には二人の親友が居る。
勇那琉翔(いさな りゅうと)と阿波路深月(あわじ みつき)。
二人共有り得ない位スッゲェ良い奴。
気ぃ使わなくて良いし、何より一緒に居て楽しい。

琉翔は身体動かすのが大好きで、いつも元気で明るい性格をしている。
俺と一緒で勉強が苦手。
テスト前になると二人で今回も死んだぁ〜とか騒いでいる。

阿波路はスッゴク綺麗でモテるのに、無自覚でいっつもニコニコしている。
勉強は出来るけど、それ以外は全く出来ない。
体育の時間になると、しょっちゅうお腹痛いとか言って保健室に行く。
運動が苦手らしい。
うん、俺も苦手だから気持ち分かる。
だけど時々本当は出来るのに隠してるんじゃないかって思う時がある。
って、考え過ぎか?
でもまぁ、もしそうだったとしても本人が隠したいのなら別にそれで良いと思う。
誰にだって言いたくない事位ある。
言いたくなったら言えば良いし、言いたくなかったら無理矢理言わなくても良い。

阿波路はいつもテストで満点以外を取らない。
対して俺と琉翔は一度もテストで満点を取った事がない。

俺達は幼稚園からずっと仲良しだ。
一緒に居るとぽかぽか心が温かくなる。
大切で大好きな俺の自慢の親友。

仲の良い親友。
表向きはそうだが、俺には漏らしてはいけない秘密がある。
それは琉翔との秘密だ。


あれは中1の時だった。
突然唇を重ねられて、頭の中が真っ白になった。
意味が分からず呆けていると、琉翔は友情の延長線上だと言った。
実際二人っきりの時や人目を忍んで何度もされたけど、それ以外はいつも通りだった。
だから別に深い意味は無いんだと軽く流していた。

それが変わったのは中3の梅雨時。
唯のキスは、互いの昂りを鎮める扱き合いへと進化した。
ディープキスしながら、互いのを一緒に重ね合わせて絶頂に向かう。
物凄く気持ち良いが、流石にこれは普通友達同士でする事ではない。
これはもう完全に友情の域を越えている。
なのに琉翔は、これも友情の延長線上だと言った。

時々俺は、琉翔が分からなくなる。
俺達の間に隠し事はない。
嘘も秘密もないし、何でも晒し出してきた。
だから俺達は、テストの点数も鞄の中身もその日食べた食事のメニューさえ互いに把握している。

俺の事なら何でも知りたがった琉翔。
どんな事でも聞いてきた。
琉翔に隠す事なんて何一つない。
だから俺は聞かれたら何でも答えた。
すると、なら奏も俺を知って?と言われて、それ以降はずっと隠し事ゼロな状態になった。

多分この行為も、誰よりも俺を知っておきたいっていう考えからなのだろう。
だけど時々、違和感を感じるんだ。
それはキスをしてる時、身体を重ねている時、ふと視線を感じる時にだ。
いつもの優しい視線の中に、熱や甘さを感じる時がある。

そして、それは俺が琉翔と阿波路以外の人達と仲良くしている時、たまに変化する。
それは本当に僅かな違いだから長年一緒に居る俺や阿波路位にしか分からないと思う。

一番大好きな友達は親友である二人だ。
だけど俺は基本、誰とでも話すし、仲良くしたい。
唯挨拶を交わすだけだったり、漫画やCDの貸し借りをするだけだったり、一緒にバカ騒ぎするだけだったりと、軽い感じの奴等も居るし。
中には、イチイチ肩を組んできたり、抱き付いてきたり、やたらと触ってきたりと、スキンシップの激しい奴等も居る。

バカみたいに騒いだり、軽く挨拶している時は感じないのだが、それは俺が他の奴等とくっついている時に感じる。
まるで、全身が凍り付く様に突き刺さる、冷たく鋭い視線。
そっと視線をその方向に向けると、一瞬でそれは消え失せ、優しくて柔らかな物に戻る。
意図的にしているのか無意識なのかは分からないが、琉翔は俺に言えない何かを隠している。
それが何か、本当は考えれば分かる。
だけど、俺は敢えてそれをしなかった。
してはいけない気がしたからだ。

多分琉翔は、俺を友達以上に見ている。

だけど琉翔が言わないのなら、俺は気付いてない振りをする。
何も知らない道化になる。



「ん、ふ、ん、んん」
放課後美術室に向かっていたら、突然琉翔に空教室に連れ込まれた。
時々琉翔は俺を人気のない場所に移動させてはキスやそれ以上を仕掛けてくる。
狭いロッカーの中だったり、トイレの個室だったり、屋上だったり、体育館倉庫だったり、図書室だったり、様々だ。
それは基本、俺がスキンシップの激しい友人達と話した後に起こりやすい。
多分、嫉妬。

いつもは誰にも見られずバレなかったのだが、その日は違った。

スルリ、シャツの下から差し込まれた手。
悪戯に指先で胸元を触られ
「…っぁ」
ピクリ身体が震える。
キュッ、軽く摘ままれ、快楽を知るソコは簡単に硬さを持つ。
指先で弄られ、見てしまうのは琉翔の唇。

ああ、舐めて欲しい。

そう考えてしまうが、流石に此処でそれは出来ない。
トイレみたいに鍵が掛かる場所ならまだしも、此処は唯の空教室で、鍵等掛かっていない。
校庭側のカーテンは閉めたが、廊下からは丸見えだ。
いつ誰が来てもおかしくはない。
だから服を脱いだりしてたら不信に思われる。
それが分かっている琉翔は、シャツの上からソコを舐めてきた。

「ひゃ、んや、ひぁ、ん」
直にされるよりもどかしい感覚が、物足りなくて逆に身体に熱を灯す。

「あっ、琉翔。琉翔ぉっ」
呼ぶ声が、しがみつく指先が
「ふ、ぁ、んんんっ」
全て甘える様になってしまう。

嗚呼、このままじゃおかしくなる。
そう感じ、自ら深く唇を重ねた時だった。
ふと、何かを思い出した。
確か以前、琉翔に同じ様にキスされていた時視線を感じた。
それはほんの一瞬だったのだが、翌朝挨拶した時、阿波路が悲しそうな顔をしたのを覚えている。
あの時は分からなかったが、もしかしたら阿波路は俺達がキスしているのを知ってしまったのではないだろうか。
という事は、これ以上此処で続けるのは良くない。
あの時は阿波路だったから大丈夫だったが、もし違う人にバレたら大変な事になる。

「移動しよ?」
そっと唇を離し、トイレに移動した。

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