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『隣』
3.
自由気ままな小学校生活も終わり、俺達は中学生になった。
今までずっと一緒のクラスだった奏と琉翔ともクラスが離れ、俺の世界はまた新たなステージに突入した。
因みに6年間ずっと同じクラスだったのは祖父の計らいだ。
優しくて心配性の祖父が先生方に頼み込んで俺が一人にならない様、毎年ずっと奏達と同じクラスにして貰っていた。
卒業式の直前に知って流石に中学でもそれをされたら過保護過ぎて恥ずかしいと感じ、お礼を言いながら止めさせた。

祖父効果が無くなったせいで案の定分かれてしまったクラス。
本当は寂しくて堪らなかったが、自分から頼んだんだ。
寂しがってちゃ心配される。
必死に自分から歩み寄り、初めて二人以外の友人を作った。

人懐っこい奏はあっという間に新しいクラスに馴染んで、早速クラスの友達と校庭で遊んでいた。
流石だ、奏。
俺まだその段階には達していない。
頑張って見習わなければ。

って、そういえば琉翔は?
一体どうしているのだろうか。
心配になってクラスを覗くと、ぼぉーっと何処か焦点が合わない様な目をして自分の席に座っていた。

ん?
あれ?
ちょっと待て、あれ本当に琉翔か?

俺と奏と一緒に居た琉翔はいつも笑っていた。
明るくて、人一倍元気が有り余っている様な奴で、決してあんな楽しくなさそうな表情なんて見せなかった。
同じ小学校だった奴等もそんな琉翔が心配で何かと話し掛けている様だったが、琉翔はずっと心此処に在らずって感じだった。
なんか、いや、かなり心配だ。

それから数日後、突然琉翔が学校を休んだ。
翌日には来ると思っていたのに、何故か3日連続で琉翔は学校に来なかった。
何だ?一体何があったんだ?
心配になり奏に聞くと
「今日学校帰り琉翔の家行ってくる」
奏は
「だから心配すんなって」
ニッコリ微笑んだ。

奏は不思議だ。
昔っから奏に言われるといつも安心する。
どんな時も奏が笑うと気持ちが晴れやかになる。

「分かった」
少し無責任だが俺は奏に琉翔を頼んだ。
大丈夫かな?
不安だ。



翌日から琉翔は復帰した。
その日を境に奏は時折俺を誘ったりしながら毎日琉翔に逢いに行く様になった。
そのお陰か、新しいクラスにも馴染める様になったらしく、琉翔の短い登校拒否は終わった。
琉翔俺以上に人見知りだったんだな。
知らなかった。

順風満帆に進みだした中学での生活。
だが、俺はある違和感に気付いた。
それは、琉翔が奏を見る目。
小学校の時には感じなかった熱が見えるのだ。

皆が好きな女の子の話をしている時、琉翔は曖昧な返答をする。
それは俺や奏位にしか気付かれない仕草だから他の人にはバレていないが、何故だろう?
俺同様まだ恋愛がよく分かっていない感じなのだろうか。
謎だ。
だけどある時気付いてしまったんだ。
それは恋愛に興味がなかったんじゃないって。
琉翔が好きなのは奏なのだと。

それを知ったのはあの日、放課後図書室に本を返却しに行った日だった。


中学で俺と奏は美術部に、琉翔は野球部に入った。
基本野球部の琉翔は授業が終わると即効部活に行く。
美術部は作品の提出がある時以外は基本自由参加だから毎日行く必要はない。
行っても皆ダラダラ過ごしてたり宿題をしていたり好きな絵を描いていたりとバラバラだ。
今日は新たな本を借りてから部室で読む予定だ。

どんな本を借りるか考えながら目的地に向かっていたら
「奏?」
空教室に入っていく奏の姿が見えた。

別に急いで図書室に行く必要はない。
折角だから奏も誘って一緒に行くかと考え、ふらり行き先を変えた。

空教室の扉の前に辿り着き、奏。
そう呼び掛けて、俺は慌てて口を塞いだ。

「んっ、ふ、ん、んんっ」

耳に入るのは初めて聞く奏の甘ったるい声と水音。

何だ、これ?

チュッ、チュッ。
何度も重なる唇。

離される度漏れる甘い吐息と声。

一体これは何なんだろうか?

一緒に図書室に誘うつもりだった奏は、何故か琉翔に抱き締められ、甘える様にキスをしていた。

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