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『隣』
5-2
「次回はアミダでパートナー決めるから楽しみにしとけよ?」
アミダって、ちょっ、ほんっと体育の顧問適当だな。

まぁ、出席番号順とか背の順がいつもだから、たまには良いか。
誰となるか分からないドキドキ感あるし。
もしかしたら運良く奏と一緒になる可能性もあるワケだしさ?
ポジティブに行こう。

精神的にグッタリしてしまった二人を引き摺りながら教室に戻った。

体育で疲れ果てても容赦なく始まる次の授業。
1限目だったから、先が長過ぎる。
奏と阿波路は机に突っ伏して死んでいるし、魂抜けたみたいに死んだ魚の目をしてる奴もいるしさあ、ほんっと皆今日大丈夫か?
俺体力あって良かった。


「ねぇ、アミダってある意味ヤバいよね?」
ん?
「何が?」
どうヤバいんだ?奏。

昼休み。
「だってさぁ、足早い人と遅い人が一緒になったら早い方イライラしちゃうし、背の高い人と低い人が一緒になったらスッゴイやりにくいし、苦手同士だったら気まずいしさぁ、ね?」
俺達は二人三脚について語り合った。

「だからさぁ、俺的には足の速さか背の高さ順で組んだ方がマシだったんだよね」
確かに。言われてみりゃあそうだ。

「俺は相手よりも何よりもコースが嫌」
分かるよ阿波路。
顧問遊び感覚で作成してるもんなぁ。
まぁ、運動会ってある意味お祭りだし、楽しんだもん勝ちっ☆みたいに考えてそうな気がする。
「多分それも青春っ☆とか言いそうじゃね?あの顧問なら」
お気楽な性格してるしな。
「それな」
3人同時に苦笑いした。


翌日、全く待っていなかった、いや、寧ろ来なくて良かった体育の時間が始まった。
アミダで決めるって、怖すぎだろ。
まぁ、少しワクワク感あるけどさ?

早い者勝ちな感じで好きな場所に名前を書いていく。
頼む、どうか足の速い奴か同じ位の背丈の奴か、奏に当たってくれ。
奏とは背丈も足の速さも体力も違うが、一緒だったらスッゲェ嬉しい。
阿波路は運動神経壊滅的だから遠慮したい、かな。

不安と期待を膨らませながら、顧問が決定した組み合わせの名前をプリントに書き終わるのを待つ。
数分後
「よし、発表するぞ」
顧問が口を開いた。

「第一走者木下と坂本」
ん?ちょっ、パートナーだけじゃなく順番まで決めちゃったのか?もう。
早いなぁ。
「第二走者速川と磯邉」
「第三走者中邑と其田」
どんどん発表されていく名前。
あっという間に
「第六走者勇那と外園」
呼ばれた。

良かったぁ。
外園(ほかぞの)とは殆ど身長差がない。足も特別速くないが遅くもない、平均的な感じだ。
俺も身体を動かすのは好きだが特別運動神経が良いワケじゃないから、お互い気兼ねなく出来そうだ。
安心した。

「第七走者阿波路と桜庭」
あっ、阿波路俺の次か。並んでる時喋れるな。
桜庭(さくらば)足速いから大丈夫かな?
少し心配だ。

って、あれ?奏まだ呼ばれてない。

「第九走者阿比留と神凪」

…………え?

漸く呼ばれた奏の名前。
だが、聞いた瞬間俺はフリーズした。

今、神凪って言わなかったか?
恐る恐る奏を見ると
「……………………えっ、嘘?」
真っ赤な顔で立ち尽くしていた。

えっと、見なかった事にしよう。
俺は何も見なかった。
奏が嬉しそうに
「えっと、よろしくね?神凪君」
神凪に握手を求めてる姿も。
全部コレは悪い夢だ。
きっと、明日になったらもう一度アミダがあるんだ。
っていう現実逃避は空しいだけか。

あ〜もう、最悪だ。
でもまぁ、いくら奏が神凪を好きでも神凪が奏に靡く筈がない。
大丈夫だ。唯、二人三脚のパートナーになっただけ。
別に人生のパートナーになったワケでも恋人になったワケでもない。
大丈夫。
それに俺と奏はキスした事あるし扱きあった事もある親友だ。
そんな簡単に俺が神凪に負ける筈がない。
大丈夫。


この時の俺は変な優越感と絶対に大丈夫だという宛もない絶対を信じて
「よろしくな、外園」
完全に安心していた。

まさかこれが波乱の幕開けになるとは、思いもせずに。



※ 次からは阿波路SIDEになります。

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