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『隣』
5-1
体育祭が迫ってきました。
運動大好きな俺にとっては幸せ期間突入なのだが、運動嫌いな奏と阿波路にとっては地獄の期間が始まった。

毎年各学年合同競技は変わるのだが、今年の1年生の男子競技は二人三脚に決定した。
それも唯走るだけじゃ芸がないからと障害物リレーと合体させた体育の顧問。
ちょっと、顔出そうか?
誰も二人三脚に面白さを求めてないんだよ?唯走って速さを競うだけで充分なんだよ。
楽しそうに
「どんな競技にしようかな?」
って、考えてんじゃねぇよ。
奏が真っ青になってるからマジ止めてあげて?
運動部や身体動かすのが好きな人だけが生徒なんじゃないからね?
運動嫌いな奴も沢山居るんだからね?
ちょっ、マジ分かってる?
嗚呼、不安しか感じない。


有り得ない発言をしてから3日後、体育の顧問は嬉しそうに
「二人三脚のコースを決めました」
発言し、各クラス事にコースを印刷したプリントを配布した。


終始二人三脚のままゴールを目指すのは変わらない。
が、それ以外が有り得なかった。
開始早々巨大扇風機の突風が邪魔をするトラップ。
其処を通過したら緩やかで低めの登り降りが続く階段もある凸凹道。
通過した次は、ツルツル滑るオイルが塗られた長いビニールマットのコース。
で、最後は普通に二人三脚でゴール。

うん、コレスッゲェ体力使うから。
スタミナある奴はイケるけど、非力な奴は無理だぞ。
奏とか死ぬわぁ、マジで。

次の体育から練習開始だぞ☆って、プリントの最後に書かれてて、☆なんか付けんな、似合わねぇよ顧問。
本気で突っ込んだ。



「まず最初はコースに慣れる為に、皆には二人三脚ではなく、一人で走って貰います」

二人三脚練習初日。

「マジかよ」
俺達は運動場にプリントに書かれた通りの有り得ないコースが出没しているのを見て、呆然と立ち尽くした。

「さぁ、早速出席番号1番の人から行ってみようか☆」
うん、顧問楽しそうだな。

ゴオオオオーーーッ!
スッゲェ音と共に回りだした巨大扇風機。
ちょっ
「うっ、わぁあぁああーーっ」
風強過ぎ。
って、あっ、相生(あいお)飛ばされた。

出席番号1番の相生がスタート地点よりもっと奥にリターンさせられた。

「あっ、ごっめーん。ちょっと風力強過ぎたね。弱くするからやり直しな?」

……………………………………。

ほんっと不安要素しかねぇよ、マジで。

その後可愛そうな相生の犠牲のお陰でギリギリスタート迄はリターンさせられない風力に調整させられた扇風機。
本気で顧問をチェンジしたい。

低めの階段有りの凸凹道は行けない事ないけれど、ひたすら体力と時間を消費する。
ヘトヘトになった状態で、それ以上にスタミナを奪うツルツル滑るコース。
非力な奴等の0に等しくなったスタミナを根こそぎいや、マイナス迄奪い去る。
で、何故か最後だけ普通に二人三脚。

って、最後通常の二人三脚に戻すんなら最初っから最後迄普通で終わらせろよ。
そう感じたのは多分俺だけじゃない筈。
奏と阿波路を含めた運動苦手組は本気で嫌だろうな、コレ。

二人三脚でなく普通に走るだけで精神的に疲れたコース。
これから先が思いやられるなぁ、マジで。

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