『ガラクタ』
帰宅
「ただいまぁ〜」
「お帰りなさい紅菓ちゃん」
玄関開けるなり、笑顔で俺をちゃん付けする命知らずな人間。
恐らく40代後半に違いない筈なのに、どう見ても10代にしか見えない魔女。
全身ゴスロリ調のラブリーな生き物。
認めたくないが、俺の母親だったりする。
つい先日迄、ピンクや白を基調としたレースやふりふりな乙女衣装だったが、流石に恥ずかしくなり、無理矢理辞めさせた。
有り得ない位似合ってるし、不気味じゃないから気持ち悪くはないんだけどさぁ。
母さん、そのまま外出するんだぜ。
有り得ないだろ?マジで。
偶然外で出逢ったら、紅菓ちゃ〜ん♪って手を振りながら走ってきて抱き付くし。
手を繋いでくるから、何故か周囲から可愛い妹さんだねって、言われるし。
いや、コレ40過ぎのオバサンだから。
言ったら殺されるが、父に。
因みに父は母溺愛。
絶対親父ロリだろ?
って、怖過ぎて言えないが。
「あれぇえ?紅菓ちゃん。何でミキちゃん持ってんの?」
ん?ミキちゃん?
「その子磯山ちゃんの家のミキちゃんよ?」
えっと、ドッチがでしょうか?
チワワ?それともぬいぐるみ?
「今から電話するから、そのまま其処に居て?」
あっ、俺まだ靴脱いでない。
「あっ、磯山さん?すみません。家の愚息がミキちゃん持って帰って来ちゃって。探されてるでしょ?本当にすみません。今から連れて行きますんで。本当に家の子バカですみません」
あっ、あのぉ〜、母さん?
今俺の事2回位バカにしなかった?
気のせいですか?
「ママが連れて行くから、ミキちゃん貸して?」
だからドッチ?
分からないから両方突き出すと
「じゃあ行ってきます」
母はチワワを抱っこして家を出た。
チワワ、ミキちゃんって名前だったんだ。
うん、取り敢えず靴脱いで家入ろ。
疲れたし。
って、母さん。
俺学校ふけて帰宅したんですが、何もお咎めなしですか?
まぁ、いっかぁ。怒られんのヤダしな。
石鹸で手を洗い、イ○ジンでうがい〈←意外と真面目〉をし、2Fにある自室へ向かう。
「おかえり♪」
あっ、居たのか。
「おかえり紅菓」
今日は仕事ないのか?
「おかえり」
うざいなぁ。
声の主は俺の父。
ピンクの(勿論地毛ではない)ふわふわロングをツインテールし、尚且つラブリーな化粧と服に身を包む魔女を溺愛する変人。
サラサラの黒髪と切れ長だが小さくはない黒目、203cmの長身と贅肉一つない引き締まった身体。彫りの深い男前美形。
見た目が最高級だけに、相手が母なのが残念過ぎる。
「紅菓」
どうやら、返事をする迄語りかけ続けるらしい。
はぁあああああ。溜め息を吐き
「ただいま、親父」
返事をした。
途端
「こぉ〜が♪」
スッゴク嬉しそうに抱き付いてくる。
「今日も可愛いなぁ、紅菓は。流石美梨香(みりか)ちゃんの娘」
いやいやいや、息子だからね?バカ親父。
それと、俺は可愛くないの、格好良いんだよ、ボケ。
母だけでなく、俺迄溺愛な親父。
ガン無視よりは遥かにマシだが、ウザ過ぎんのもちょっと嫌。
「あれ?紅菓、ぬいぐるみ買ったのか?」
あっ、そういえば連れて来ちゃったんだコレ。
「ぬいぐるみと紅菓、似合うなぁ〜。ドッチも可愛い♪」
・・・・・・・眼科をオススメ致します。
パタン。残念過ぎる美形をスルーし、俺は自室に入った。
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