『ガラクタ』
もふもふ
俺の名前は赤峰紅菓(あかみね こうが)、高1だ。
甘い物と可愛い物をこよなく愛す平和主義な男なのだが、小学校低学年の時、初恋の女子にバカにされ、人前ではソレを封印した。
悔しさを感じた俺は、二度とバカにされたくない、そう想い、強い男を目指した。
身体を鍛え、牛乳を沢山飲み、高い背丈と頑丈な肉体を手に入れた。
知り合いに族に入っている人や、不良が居る上に、売られた喧嘩は全て買い、何故か全勝してしまった俺。
気が付けば、子供と老人に嫌われる、怖い不良と周囲に認識されてしまった。
自分からは喧嘩した事ないのに。
平和主義なのに、なんて理不尽なんだ。
俺は唯、毎日可愛い物と甘い物に囲まれて生きていければ幸せなのに。
あっ、彼処に咲いてるのヴィオラだ。
可愛い。
近くで見よ〜♪
そう想い足を動かすと、ドンッ!!思いっ切り肩をぶつけられた。
「イッテェな、前見て歩け、前」
ぶつかってきた方が文句を言ってくる。
いやいやいや、ソレ俺の台詞。
「ぁあっ?!何だ、その目は?なんか文句あんのか?こら」
いえ、目つきはわざとじゃあありません。
元々なんで、あんまイチャモン付けないで?
「黙ってないで何か言えやボケぇ」
いやぁ〜、何か言ったら余計切れるでしょ?
火に油注いじゃうでしょ?
「生意気な態度取りやがって」
ぇ〜?沸点低くない?
相手すんの面倒臭っ。
そう感じたから聞き流してただけなのに、相手は勝手に怒り出した。
「舐めんなっ」
ヒュンッ!飛んできた拳。
いや、舐めたら不味いでしょ?アンタ。
甘くなさそうだし。
って、そういう意味じゃない?
軽く受け流し、隙だらけの腹部にトンッ、拳を当てた。
グェッ。蛙の様な声と共に倒れた男。
弱過ぎ。ウォーミングアップにもなりゃしない。
って、また勝っちゃったし。
ほんっと皆弱いよなぁ。
なんで弱いのに喧嘩売ってくるんだろ?
男のロマンってヤツ?
マジ理解不能。
はぁ〜疲れた。帰って寝よ。
登校途中だったが、なんか今日はもうやる気出ない。
鞄を持ち直し、家路を目指した。
ふぁあ〜、大きな欠伸をしながら歩いていると
「ふみゃぁあああああああ〜っつ」
不思議な叫び声と、煩い犬の鳴き声がした。
何だよ、この声。
ゆっくり声のする方に顔を向けると、キュンッツ!!激しく胸がときめいた。
かっ、可愛いっつ!!
何だアレ?スッゲェ可愛いじゃんか。
「たぁ〜すぅ〜けぇ〜てぇ〜」
情けないけど、最強可愛いアニメ声。
コレは一体ドッチからなんだ?
視界に入るはブラウンの可愛いチワワとぬいぐるみ。
どちらも通常は喋らない。
が、声を発する存在は、そのどちらか。
う〜ん。ドッチだ?
「にゃぁああああああ〜」
ちょっ、ほんっと可愛いなぁ。
癒される。
まっ、この際ドッチでも良いや。両方共お持ち帰りで。
ひょいっ。チワワとぬいぐるみを持ち上げると、そのまま歩き出した。
本当は鼻歌歌いながらスキップでもしたいが、見た目不良な男がしたら不気味だ。
超絶可愛いのをGetして、上機嫌なのをポーカーフェイスで誤魔化し、俺は真顔で下校した。
って、不良が可愛いチワワとぬいぐるみ持ってる時点で、もうある意味不気味なのかもしれないが。
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