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BLEACH夢
特別を願う想い




 想いが翼になって飛ぶなら
 この想い、どうか届いて

 でもね、翼になっても飛べないの
 ただの飾りなの
 飛べないから、溜まって溢れて
 翼は羽根という欠片になって散るの

 想いが散ってしまったら
 この想いは消えるのかな

 羽根が、貴方の元へ舞い落ちれば
 欠片でも拾ってもらえるのかな



 ─*─*─*─*─



 『ねぇ、冬獅郎』

 「日番谷隊長だ」

 『えー、今更そんな改まったの無理!
 冬獅郎は冬獅郎でしょー?』

 
 愛おしい名前を呼べば、ぶっきらぼうに応えてくれる。
 なんて、幸せなんだろう。

 
 「おい小鳩、俺もう隊長なんだぜ?
 いつまでも昔のままじゃねぇんだよ」


 そう言いながら書類に筆を走らせる。
 うん、知ってるよ。
 昔とは違うよね。

 幼馴染み、この関係性に感謝したり恨んだりの日々だよ。


 『わー、冬獅郎に小鳩って呼ばれるの変な感じする…
 名前で呼んでよ』


 冬獅郎が隊長になってから今まで名前で呼んでくれたのが名字に。
 ねぇ、それがどれだけ私の心を抉るか、冬獅郎は知らないでしょ?


 「ダメだ、俺とお前は上司と部下だ
 んな1人だけ名前とか呼ばねーよ」


 うん、それはわかるよ?
 席官ならまだしも、隊長だもんね。
 でもね、私はその1人だけ、の特別になりたいんだよ?


 『冬獅郎のケチー』

 「だから、日番谷隊長だ」


 ずっと書類から目を離さず、話してる私を見てくれない。
 サラサラと滑らせるように書く手の動きや
 書類を見てて、伏し目がちな翡翠の瞳も大好きだけれど。


 「もー、隊長ったらケチですねー
 別に名前くらいいーんじゃないですか?」


 今まで黙って雑誌を読んでいた副隊長の乱菊さん。


 「いいわけないだろ
 松本、さっさと仕事をしろ」


 乱菊さんを見ると、目元と口元がニヤッとしている。
 私と乱菊さんは目を合わせて合図を交わし


 『「シーローちゃん」』


 もう1人の幼馴染みである、あの子の真似をしてみる。


 「……シロちゃん言うな!
 日番谷隊長だ!」


 ピキリと青筋を立てて、怒鳴る。
 筆折っちゃいそうなくらいに。
 乱菊さんと私はそれを見て、笑う。
 なんてことない、いつも。


 『もー、冬獅郎もそんな怒らないでよ
 仕事はちゃんとするから、ね?』

 「………」


 諭すように言えば、冬獅郎がやっと私を見てくれた。
 まぁ、それはそれは鋭い目付きで。
 始めたの私だもんね。
 瞳がそう言ってるよ。

 ──桃にはそんな睨み方しないくせに

 痛む胸に気付かないようにして
 私は、睨んでくる冬獅郎に微笑む。

 そしたら冬獅郎は呆れたように
 私から視線を外して、手元の書類に視線を向ける。

 これが、いつもの…いつもの光景。

 私は少し目を細めて冬獅郎を見る。
 それから乱菊さんを見ると、綺麗な顔を少し歪めて、私を見てる。

 これも、いつものことで。
 私は乱菊さんに悪いことをしてる。
 乱菊さんは私が冬獅郎を好きなことを知っている…というか気付いていて協力的だ。

 凄く嬉しいけど、この気持ちのせいで
 今の幼馴染みの仲が壊れたら…もう、戻れなくなる。
 だから、言わないの。
 声にしたり、誰かの耳に入れたら、残るでしょ?




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あきゅろす。
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