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「テ―イ―トッ」


花たちが綺麗に咲き誇る教会の中庭。


今までいつものように他愛のない事を喋って笑い合っていた時だった。


突然、テイトが口をつぐんで何か一点をじっと見つめ始めたから、ミカゲはどうしたのかと名前を呼んで目の前でひらひらと手を振った。


だけれど、テイトはそれには気付かずにずっとある場所を見つめている。


今のテイトからは、普段のテイト、というか軍にいた頃のテイトからでは想像が出来ない程に温かい空気を感じる事が出来てミカゲは驚くと同時に何だか嬉しくなる。


(テイトのやつ、何見てるんだ?)


ミカゲは好奇心に駆られて、テイトの視線の方にゆっくりと顔を向けた。


その瞬間、ミカゲの口元から思わず笑みがふわりと零れ落ちた。


テイトが視線を向けている、その先にいたのは、そう、フラウ司教だった。


白い司教服の長い裾を風にはためかせて廊下を歩くフラウ司教の横顔はミカゲから見ても見惚れてしまうほどに綺麗だ。


遠くのフラウ司教はこっちには気付かずにそのまま廊下を歩いてやがて姿を消す。


そういえば、とテイトを振り返れば、テイトは呆けたようにフラウ司教が姿を消した廊下の端を見ていて、「あぁ、テイトもこんな顔するんだな」と思えば何だか面白くてだけど嬉しくてミカゲは笑ってしまう。


さすがのテイトもニヤニヤと笑うミカゲに気付いたのだろう、少々頬を赤くして振り返るとミカゲを軽く睨んだ。


「‥‥何だよ」


「今、見てただろ?」


「なっ!!」


気付かれていないとでも思ったらしい(あんなの誰が見たって気付くのに)、テイトはミカゲが言った瞬間、ぼんっと顔を赤くした。


「み、見てねぇ!だっ誰があんなエロ司教なんか見るかっ」


真っ赤な顔で怒るテイトにミカゲはニヤニヤと笑いながら「誰がフラウ司教って言ったんだよ?」と言えば、テイトは「うっ」とあからさまにうろたえる。


本当、分かり易いよなぁ。


「‥‥っ、ハメただろ」


ふて腐れたようにジト目で睨んでくるテイトにミカゲはそんなのどこ吹く風といった感じで爽やかに笑う。


それにしても、とミカゲは思う。


さっきのテイトの横顔といい、熱っぽい視線といい、それにさっきの反応といい、もはや疑いようはないだろう。

無意識なんだろう(だけどそこが余計に微笑ましい)、嬉しそうに頬を染めていたテイトの横顔を思い出してまたミカゲの顔は緩んでしまう。


「ま、頑張れよ大親友!俺はお前の事、応援してるぜ?」


肩をポンッと叩いてやればテイトは「っな!」とまたまた顔を染める。


「だからっ!俺は別にフラウの事なんか好きじゃねぇっ!」


「誰がお前がフラウ司教の事を好きだって言ったんだ?」


「!!」


そうミカゲがからかえば、テイトはこれでもかという程に顔を真っ赤にして。


そんなテイトが無性に微笑ましくてけらけらと笑うミカゲにテイトは「さっきのは卑怯だ!」と真っ赤な顔でそう喚いたのだった。





(初恋が叶わないなんて嘘っぱちだな。え、何でかって?それは、フラウ司教もテイトの事いっつも見てるからさ!)




***
fin
20090816


あきゅろす。
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