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まだ誰も起きていない、早朝の教会の休日の朝。
あとちょっとで皆が起きるだろうという時間、フラウは腰までシーツで覆ってベッドに寝転がったまま、何も身に纏っていない上体だけ起こして朝の煙草を味わっていた。
休日の早朝独特の、少しけだるい一日が始まる匂いと香り馴れた煙草の匂いが部屋に充満する。
テイトは自分のサイズには大きすぎるフラウのシャツを一枚着ているだけの格好で、ベッド脇で背伸びをしていた。
いつもと何も変わらない、二人だけの静かな朝。
「フラウ、」
不意に、テイトがベッド脇でほんの少し甘えるようにフラウを呼ぶと、ベッドの上で一服していたフラウは、くわえていた煙草をベッド脇の灰皿に置いて「来いよ」とテイトに手を差し出した。
フラウの手を取ってテイトがベッドの上へ上がれば、ぎしり、とベッドのスプリングがやけに官能的に軋む。
そのままフラウの腕に誘われて、テイトは上体だけ起こして寝転がったままのフラウのシーツで覆われた膝の上にチョコンと馬乗りになった。
「テイト、」
「フラウ、」
求め合うように互いの名前を呼び合う二人はどちらからともなくゆっくりと唇を合わせる。
「っん、」
ゆっくりゆっくりと、何度も角度を変えて舌を絡め合わせる深い口づけにテイトが時折離れる唇から甘い吐息を漏らせば、フラウはそんなテイトをもっと煽るようにだんだんと深く、でも急ぐことなく口づけていく。
「ふら、ぁっ」
フラウは口づけながらテイトの細い腰を引き寄せると、テイトもフラウの首に両腕を軽く回して身体を密着させた。
舌を入れるキスも、テイトは今では前よりは慣れてきて、やがて口内にゆっくり侵入してきたフラウの生温い舌をテイトはまだ不慣れながらも追い掛けて絡め合わせようとする。
「ふぁ、んっ‥‥」
フラウの舌がゆっくりと、だけれど確信的にテイトの歯茎を順に撫でれば、ビリッとした甘い痺れがテイトの全身を襲ってテイトは微かに身体を震わせる。
そんなテイトにフラウは満足げに小さく笑うと、今度はテイトが先に舌を絡め合わせてきて、フラウはそれに応えてテイトの舌をゆっくり自分のと絡める。
くちゅくちゅ、と互いの唾液が交わり合う音は何故かやけに淫らに耳に響いて、それがまたテイトの身体を、心を熱くさせていく。
ゆっくりと過ぎ去っていく二人だけの甘い時間。
二人はお互いを確かめ合うように、深く、だけれどゆっくりと甘美な口づけをずっと交わし続ける。
「っはぁ、んっ」
部屋にはテイトの唇から零れ落ちる甘く妖艶な吐息だけが時折響いていた。
一向に終わる気配のない、早朝からの深く長い口づけはテイトにはあまりにも刺激的で、テイトの腰に力が入らなくなれば、フラウは手慣れたようにテイトのか細い腰を腕を回してそっと支えた。
「っ、別にいいっ、ぁっ」
別に支えなくてもいい、という意味だろう。
強気な恋人にフラウは「腰砕けてるぜ?」と吐息混じりにキスとキスの合間に掠れた声で囁けばテイトは顔を赤くして、そんなテイトが愛おしくて仕方がなくて、フラウは口元を緩めながらまたテイトの唇に吸い付く。
「ん、ふりゃう‥‥!」
「っテイト、」
自分達の空間だけ世界が止まっているような甘い錯覚。
互いを激しく求めるようないつもの夜のキスとは違う、互いを確かめ合うような、ゆっくりとした長く優しいキスは口では言わないけれどテイトは好きだ。
やがて二人はまたどちらからともなく、ゆっくりと唇を離した。
きらり、とお互いの間に光る唾液の透明な糸。
何度も目にしているはずなのに、まだ恥ずかしいんだろう、テイトは頬を微かに朱色に染める。
その光景があまりにも可愛らしくて、フラウは満足げに微笑んだ。
「たまにはこんなキスもそそられるぜ」
「‥‥このエロ司教」
ニヤリとフラウが笑えば、テイトはますます顔を赤くする。
ふと部屋の時計を見ればもう起きる時間で、「そろそろ用意しねぇとな」とフラウは自分の膝の上に座るテイトの髪をそっと手ですいた。
「ほら、行くぞ」
そう急かすけれど、自分の上に未だ馬乗りになったままのテイトがどく気配は全くなく。
フラウは、両腕をフラウの首に回したままのテイトとぱちりと目が合う。
「フラウ」
自分の名前を呼ぶテイトの瞳が熱を持っている気がした。
「ん?」
フラウはテイトの髪を撫でながら優しく相槌を打つ。
「もっかい、して?」
可愛らしく小首を傾げて、恥ずかしそうに頬を赤らめて、消え入りそうな声で上目遣いでそうおねだりされれば、フラウが断れるわけがなく。
「ったく、お前も人のこと言えねぇな」
「フラウのせいだろ!」
「へぇ?そんなに気持ち良かったか?」
不適に笑いながら意地悪に問うフラウに、テイトは自分の失言に気付いて真っ赤になって慌てるけれど時既に遅し。
「フラウのドS鬼畜っ」
「お前だけにな」
「な、」
そうフラウが甘く囁いてテイトの耳を甘噛みすれば、テイトはびくりと身体を震わせてフラウに抱き着いて、二人は微笑みながら互いの視線を合わせるとまたゆっくりと深く長い口づけを交わす。
酸欠になるくらいキスして欲しい
(お前とのキスは、酸素を吸う時間さえ惜しいんだ)
***
fin
20090609
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