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お前がいないと、オレは何もできない。


笑うことも、泣くことも、怒ることも、呼吸することさえ、できない。


依存してる、その言葉が1番しっくりくる。


大袈裟かも知れない、お前がいないとオレはきっと生きる意味すら失うんだろう。


お前はオレの事を天使だって言った。


天使が天から堕ちてきたのかと思った、って。


でも、オレはそんなに綺麗な人間じゃない。


綺麗な人間じゃないんだ。


何人もの、何百人もの人間の真っ赤な血でオレは自らの手を染めてきた。


だから、オレはお前が言うような綺麗な人間じゃないんだ。


オレは汚れてるから。


ごめん、こんな事言って。


そう言ったらいきなり後ろから抱きすくめられた。


ふわりと香る煙草の匂いがオレの肺を満たしていく。


「アホかクソガキ。お前は汚れてなんかねぇよ。お前は十分綺麗だ」


降りかかるいつもと変わらない低く優しい声。


オレの胸は急に痛くなる。


違う、違うんだ、オレは綺麗なんかじゃない、汚れてるんだ、汚れてるから、


「‥でもオレは軍でたくさんの人を殺してきた」


「そうだな」


「たくさんの人の血を浴びてきたんだ」


「知ってる」


「ならなんで‥‥っ」


不意に込み上げてきた涙をオレは必死に堪える。


オレは汚れた人間だから、お前に優しくされたらダメなんだ、お前に触れられたらダメなんだ。


お前まで汚したくない。


オレはフラウから離れようともがくけれど、ますますフラウは腕の力を強めてオレは動けなくなる。


「よく聞けテイト」


「っ、」


珍しいフラウの真剣な声にオレはもがくのを止めた。


「手を汚したとかは関係ねぇ、大切なのはここなんだよ」


フラウはそう言うと、そっとオレの左胸に触れた。


トクン、と跳びはねる心臓。


そんなオレに構わずフラウは言葉を続ける。


「お前のここは汚れてなんかねぇよ、テイト」


「ふら、う」


あぁ何でだろう。


フラウに言われたら何故かそんな気がしてくるんだ。


フラウに言われたらどんな言葉でもそう思えてくるんだ。


「お前の心は誰より綺麗だ」


「‥‥らう、」


すーっとオレの頬を伝う涙をフラウはオレを後ろから抱きしめたまま指で優しく掬う。


「オレが保証してやる。このオレ様が保証してやってんだからこれほど心強いモンはねぇだろ?」


いつものようにわざとからかうように言うフラウにまたオレの涙は溢れた。


「っ、この不良司教っ」


そう言うと、背後のフラウが笑う気配がすればオレはギュッと強く抱きしめられて。


「安心しろ、テイト」


ほら、お前がそう言えばオレの心はいつもあっという間に満たされていく。


まるで、ドシャ降りの空が一気に晴れて青空が雲間から覗くように、フラウはオレの心に光をくれる。


いつも、そしてこれからもずっと。




Everytime
(お前がオレの事を天使っていうのなら、きっとオレは、お前がいないと飛べない、翼の折れた天使だ)




***
fin
20090523


あきゅろす。
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