. 今、ここにいるのはオレとお前だけ。 誰もいない、今はオレとお前の2人きり。 だからいいだろ? いいだろ、フラウ――――。 「‥フラウ、起きてる?」 「起きてる。何だ、寝れねぇのか」 真っ暗な闇が世界を支配する真夜中は誰もが寝静まっているせいか静かで、世界が少し小さく感じる気がする。 いつからかは覚えていないけれど、今ではたまにこうやって並んで夜を共にする事は珍しくなくなっていた。 そう思いながら、テイトは横で寝ている男の名前を小さく呼ぶ。 そうすれば返って来たぶっきらぼうだけどフラウらしい返答に少しテイトは笑みを浮かべて口を開いた。 「‥‥なんか真夜中ってさ、世界が小さく感じるよな」 真っ暗な暗闇のせいか、真昼だったらガキっぽくて恥ずかしくて言えない事さえも今はするすると自身の口から零れ落ちるから不思議だ。 (きっとこの真っ暗な暗闇のおかげだ) いつものフラウの調子なら「ガキっぽい考え方だな」と笑うかも知れないけど、今のフラウは黙ってテイトの言うことを聞いてくれていた。 でもテイトには分かっている、フラウは本気で自分を馬鹿にするような態度や言葉は絶対に言わないし、絶対にしないと。 「なんか、‥‥この世界にお前と俺しか存在しないみたいだ」 「何だそれ」 口ではそう言っていてもフラウが微かに微笑む気配がしてテイトも口元を緩める。 「だからさ、」 「?ちょ、テイト、」 身体に重みが増してフラウが瞳を開ければ、いつの間にか上体を起こしたテイトがフラウの上に乗っていて、フラウは慌ててテイトをどかせようとする。 「どけ、テイト。ったく、大人をからかうな」 フラウは困ったようにはぁ、とため息をついて前髪をかきあげるけれど、テイトは動じた様子もなく、らしくない笑みを口元に讃えてフラウの耳元へ顔を近付けた。 「‥‥なぁ、いいだろ?フラウ」 いつもフラウが自分にするように、出来るだけ声音を低くして耳元で囁けば、フラウの身体が微かにびくりと震えてテイトはフッと笑う。 顔を耳元から離してフラウを見れば、微かにフラウの耳元が赤くなっていて。 テイトの欲に溺れた翡翠の瞳がフラウを捕らえた瞬間、フラウはぐいっとテイトを引っ張った。 ドサッ あっという間に形勢逆転、フラウは慣れたようにテイトを自分の下に組み敷く。 交錯する深いサファイアと深いエメラルド。 青白い月光を反射したエメラルドグリーンの瞳が輝くさまはとても美しくて、しかも微笑みながら誘うテイトの表情がとても妖艶な笑みで思わずフラウは息を呑む。 「っ、たく、どうなっても知らねぇぞ」 そうフラウが言えば、テイトにいきなりシャツをぐいっと引っ張られてとっさにテイトの顔の横に手をつけば、お互いの顔の距離があと数ミリでキスできるくらいの至近距離になっていてフラウは思わず息を止めた。 テイトのエメラルドグリーンの瞳に驚いている自分の顔が映っているのが見えたのもつかの間、テイトは色欲に彩られた瞳を細めて魅惑的に微笑んだ。 「早くして、フラウ」 情欲ラブリーロマンス (もっと深く、もっと甘く、もっと激しく、) *** fin 20090518 |