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フラウは優しい。
煙草吸う不良司教だし、口悪いし、俺の事いつもからかうし、乱暴だし、エロ本大好きなエロ司教だけど、フラウはやっぱり優しい。
だけど、その優しさが怖い時がある。
それは俺がミカエルの瞳を持ってるから。
フラウが優しいのは、俺がミカエルの瞳を持ってるからなんじゃないか。
だから、もし俺からミカエルの瞳が離れてなくなったら‥‥、その時のことばかり想像して俺はいつも息が苦しくなる。
嫌なんだ、フラウが俺から離れていくのは。
何でかは分からない。
だけど嫌なんだ。
なぁフラウ。
お前が俺に優しいのは俺がミカエルの瞳を持ってるからなのか?
本当はそう聞きたいけど、答えを聞くのが怖くていつも聞けずにいる。
あぁそうだ、と言われるのが怖い。
「よぉクソガキ」
「、フラウ」
いつものフラウの憎まれ口に、いつもなら反応する俺。
でも何故か今日だけはそんな気も起きなくて、俺はフラウの名前を呼んでフラウから目を逸らす。
そんないつもと違う俺にフラウは気付いたのか、フラウは小さく「テイト」と俺の名前を呼んだ。
びくり、と無意識に俺の肩が震える。
「お前、大丈夫か?」
いつもとは違う優しいフラウの声音に俺はフラウの司教服の裾をギュッと掴んだ。
もうダメだ、俺、我慢出来ない。
聞かずにはいられない。
「っ、ふら、う」
「ん?」
どうした?と頭を優しく撫でるフラウの大きな手に息が詰まる。
「‥‥お前が俺に優しいのは、俺がミカエルの瞳を持ってるから、なのか?」
消え入るように言った言葉。
数秒後の残酷な答えが聞きたくなくて、俺はギュッと目をつぶる。
数秒後、聞こえたのは呆れたようなフラウのため息だった。
「お前なぁ、」
んなバカなこと考えてたのかよ、と言うフラウに俺は顔を上げてフラウを睨んだ。
「バカなことって何だよ!俺だって俺なりにちゃんと考えて‥‥」
「前言っただろ?」
「、っ」
目の前には見慣れてる深いサファイア色。
フラウはちょっとしゃがんで俺と目線を合わせてくれていた。
「な、何を?」
ドキドキする胸を必死に抑えて俺はフラウを見返した。
そんな俺にフラウはふっと小さく微笑んで。
「俺はお前自身が好きなんだよ。ミカエルの瞳は関係ねぇ。俺はお前自身が好きなんだ」
だから自信持てよ、というフラウの言葉に俺は目の前がぼやけて、フラウに見られないように慌てて袖で拭う。
「信じて、いいのか?」
フラウを。
「おう、信じろ」
そう言って笑ったフラウはいつものフラウで。
いつもは絶対にしないけど、俺はそっとフラウの首に抱き着いた。
フラウはほんの少し驚いたみたいに止まっていたけど、ゆっくり俺を抱き寄せて小さい子にするみたいに背中をポンポンと軽く叩いてくれて。
「ったく、手のかかるガキだぜ」
「うるさい、ちょっと黙ってろ」
そんないつものやり取りさえ愛しくて、俺はフラウに気付かれないように口元を緩めた。
例え世界を敵に回しても
(お前だけは俺の味方でいて。そうすれば何も怖くないから)
***
fin
20090405
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