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「‥‥‥‥」


「‥‥‥‥」


「‥‥‥何だよ」


「何でもない」


「何でもないなら何でそんなに見てくんだよっ」


「‥‥‥‥」


「無視かよっ」


何なんだよ、と俺は頭をかく。


それも目の前のテイトのせいだ。


やつは、さっきから俺のことをじーっと見つめてくるのだ。


しかもけっこう至近距離で。


しかも無表情で。


何と言うか、非常に居心地が悪い。


怒ってるわけでもなし、ただ純粋に見てくるのだ。


別に嫌なわけじゃない。


ただ、好きなやつに見られたら誰だって少しは恥ずかしいし意識してしまう。


俺は軽く舌打ちして、とりあえず落ち着く為にライターで煙草に火をつけた。


肺いっぱいに煙草の香りを吸い込んで、ふぅー、と息を吐く。


「‥‥お前の目」


ぽつり、とテイトの口から零れ落ちた言葉に俺は視線だけテイトに向ける。


ぱちっと合う視線。


エメラルドグリーンの深い澄んだ瞳には自分が映っているのがよく見えて、綺麗なエメラルドグリーンに吸い込まれそうな感覚が俺を襲う。


「‥‥‥何だよ?」


「お前の目、綺麗だな」


その言葉に、今までテイトは俺の目を見てたのか、と納得する。


目なら、


「お前の方が綺麗だろ」


翡翠だから珍しいしな、と言えば。


「俺はお前の目の色、好きだ」


そう言ってテイトは小さく笑った。


その笑顔が眩しくて俺は目を細めて、テイトから視線を外す。


「んなに見てたらキスするぜ」


「殴るぞ」


間髪を入れずに返って来た冷たい返事に、ひでーな、と言って俺は笑う。


「キスしたら、お前の目が見えなくなるだろ?」


「いつでも見えるじゃねーか」


「今、見てたいんだよ」


ふーんと言って俺はまた煙草の煙を吐き出す。


「フラウ、こっち向いて」


本当は向きたくなかったけれど、いつもは甘えないテイトに甘えた口ぶりで言われたら断れないわけで。


俺はため息をつきながらテイトへ視線を向ける。


一瞬のことだった。


ちゅ、と俺の頬に柔らかい感触が伝わって驚いてテイトを見る。


「これだったらお前が見える」


そう言って嬉しそうに笑うテイト。


そんなテイトに俺はニヤリと笑って。


「こっちでも目を開けてたら俺が見えるぜ?」


「なっ」


慌てて離れようとするテイトの頭を強引に抑えて、俺はテイトに口づけた。


一瞬だけ止まる時間。


離れた唇に、テイトは閉じていた瞼を開けてキッと俺を睨んだ。


だけど俺にとったら痛くもかゆくもないわけで、俺はふっと小さく笑う。


「っ、目開けとくなんて無理だろっ」


「かもな」


「かもなってお前‥‥」


バカにしてんのか?!と怒るテイトに耳元で低く「好きだ」と囁けば、みるみるうちにテイトの顔は真っ赤になって。


顔を近付ければ瞳を閉じたテイトの唇をまたそっと塞いだ。




Heaven In Your Eyes
(お前に見つめられたら、胸がドキドキ鳴って苦しくて痛くてでも心地良くて。このまま時間が止まればいいのに、なんて、らしくないけど思うんだ)




***
fin
20090405



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