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あいつが笑うと俺も嬉しくて。


あいつが哀しそうにしてると俺も哀しくて。


あいつが痛そうにしてると俺の心も痛くて。


あいつが笑う度に俺の心臓は跳びはねて。


あいつと目が合う度に俺の鼓動が速くなって。


あいつに名前を呼ばれる度に俺は心が満たされて。


いつでもどこでも想うのはあいつの事ばかり。


いつでもどこでも不意に頭を過ぎるのはあいつの事ばかり。


「‥‥イト、おいテイト」


「‥‥‥!」


ふと我に返った俺の目の前には、目つきの悪い見慣れた不良司教が立っていた。


「なんだ、フラウか」


いつものクセで照れ隠しに出て来たの言葉は、俺の本心とは全く違う言葉。


言った瞬間後悔するけどもう遅い。


「なんだ、とは何だよ。失礼なクソガキだな」


「フラウがいきなり話し掛けてくるからだろ」


顔を近付けてくるフラウに「近い近い」と内心焦って俺は慌てて顔を背けながらも、口から滑り落ちた言葉はやっぱり気持ちとは裏腹な言葉で。


一瞬間が開いた後、フラウは俺から離れると、いつもとは違う、冷たい声音で口を開いた。


「‥‥じゃあもう話し掛けねぇよ」

微かに苛立ちが含まれた、冷たく突き放すような声と言葉に俺の心臓はナイフにグサリと突き刺された。


目の前が真っ暗になってもう何も考えられなくなる。


フラウの表情を見るのが怖くて俺は顔を俯けた。


違う、本当は違うんだ。


フラウに話し掛けて欲しくないわけじゃないんだ、本当は話し掛けてくれたから嬉しくて、行かないでお願い待って。


「‥‥‥‥っ」


俺は歯を食いしばって必死に今にも崩壊しそうな涙腺を止めようとした。


「‥‥‥何でっ」


何でそんな事言うんだよ、と言いかけた時だった。


「なんて、な。本気にしたか?」


あろうことか、フラウがニヤッとさも楽しそうに笑いながら俺の顔を覗き込んできたのだ。


さっきのフラウとは真反対のフラウの態度に俺の思考回路はショート。


「な、ななな‥‥」


じゃあさっきのは嘘‥‥?


「嘘、なのか‥‥?」


ようやくさっきのが冗談だって事に気付いたのは数秒経ってからだった。


「っ、フラウのバカやろうっ」


「お、おいっ」


嘘だと冗談だと分かったらホッと安心して気が抜けて涙腺が緩んで、気が付いたら俺の頬を何か冷たいものが這っていた。


「‥お前、泣いてんのか?」


それが涙だと気付いたのはフラウに指摘されてからで。


俺が泣き出した事に焦ったのか、フラウは「どっかいてーのか?」なんて間抜けな質問をするからますます俺の涙腺は決壊し始める。


「っ、お前のせいだよこンのエロ司教っ」


そう言って俺はこれ以上フラウに泣き顔を見られないようにフラウにギュッと抱き着いた。


そんな俺をいつもみたいに優しくフラウが抱き留めてくれた事に安心してまた涙が溢れ出す。


「‥‥っ」


「‥泣き止めよ、テイト。俺が悪かった」


「、お前が、お前が泣かせたんだからな」


フラウの服からは懐かしい嗅ぎ慣れたフラウの煙草の香りがして不思議と心が落ち着く。


「わりぃ、やり過ぎた」


だってお前素直じゃねぇからいじめたくなったんだよ、なんてフラウがちょっと哀しそうに言うから俺も数々の心当たりを思い出してちょっと罪悪感が込み上げて来て。


「‥‥フラウ」


「ん?泣き止んだか?」


俺の声にフラウは俺の頭を撫でて優しく問う。


そんなフラウにも俺の心はときめく。


「‥‥キスしてくれたら泣き止む」


それは遠回りに「キスして」っていう俺の暗号。


もちろんその暗号の意味に気付いたフラウはフッと小さく笑って。


顎を片手で優しく持ち上げられたから俺はそっと瞳を閉じた。




モンシェリー
(俺だけの可愛い可愛い愛しい人)




***
fin
20090413


あきゅろす。
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