. 「俺、死神になって良かったかもな」 いきなりの意味不明なフラウのセリフに、テイトは眉を潜めて横で煙草を吸っているフラウを見上げた。 教会にはバルコニーが所々あって、今フラウとテイトは並んでバルコニーでつかの間の休憩を取っていた。 といっても、フラウの喫煙にただテイトが着いて来ただけなのだが。 「何の話だよ」 いきなり意味分かんねぇ、とテイトが言えば、横顔しか分からないけれどフラウは微かに笑った。 「だって死神じゃなかったら‥‥お前には会えなかっただろうからな」 それは予想外な言葉。 刹那、テイトの白い肌に朱色が差す。 「、っい、いきなりこっぱずかしい事言うなよなっ」 心臓に悪い、と口では文句を言いながらもテイトは微かに頬を緩める。 優しく吹くそよ風は、テイトとフラウの間をそっとすり抜けていって、フラウはくわえていた煙草を離して、テイトは風に吹かれないように片手で髪を抑えた。 この時間がテイトは好きだ。 こうやって何もせず穏やかに日々を過ごせる時間がテイトにはとても愛おしい。 口には出さないけれど、同じ事をフラウも思ってくれている事が不思議と感じられて、それがとても嬉しかった。 「でもさ、フラウ」 「?」 「お前がゼヘルじゃなくても、俺達出逢ってたと思う」 フラウが驚いて自分を見る気配がして、テイトは我ながら言った言葉に赤面するけれど、その語尾は強くはっきりとしていた。 「どんな形でも、絶対、俺とフラウは出逢ってる」 「‥‥運命、ってか?」 フラウの表情が気になって横を見れば、案の定、いつもみたいにニヤッと笑っているサファイアの瞳と目が合って、テイトは何故か目が離せなくなる。 「運命のヤツ、だよっ」 恥ずかしかったけれどこれだけは言いたくて、テイトは声を搾り出すようにして言うと、フラウはポカンとテイトを穴の開くほど見ていたけれど、からかわれると身構えたテイトの予想を裏切って、ふわりと滅多に見せない優しい笑みを浮かべた。 「それ、俺も思った」 少しだけ勇気を出して (少しだけ勇気を出して言ったら、温かくて不思議と幸せな気分になって、たまには素直になるのも悪くはない、なんて思う) *** fin 20090409 |