眼差しで散らす



熱の宿った金色の眼で舐めるように見つめられれば全身が粟立って自然と腰が引ける。

眼光に縛り付けられるように縫い止められるように、動けなくなるなんてことは本当にあるんだと驚いた。

「ほら、どうした」

クツクツと喉の奥で笑いながら心底愉快そうに促す蓮を睨み付ける。精一杯の抵抗のつもりだったが多分赤面し切った今の俺じゃ迫力に欠けるものだっただろうと後悔した。

逆らえないと解っていても逆らわずにはいられなかった。もし甘んじて受け入れてしまえば男としてこれまで培って来たプライドを自らの手で殺してしまうことになる。
否、この場合直接手を掛けるのは俺でもけしかけたのは蓮だから蓮に殺されることになるのか。そう思うだけで何故か体を甘ったるい震えが駆けた。しかし今は単純過ぎる自分を責める気にもなれなかった。

なかなか行動に出ない俺に次第に苛立ってきたらしい蓮がついに立ち上がり、すぐ眼の前にまで詰め寄ってくる。

反射的に逃げ出そうとした俺の右手首を掴み、背中に回り込んでもう片方の手も掴んだ。
あっという間に蓮に後ろから抱き締められるような格好になる。両手の自由を奪われ身動きが取れない。身長どうこう言っても腕力では蓮に敵わないのが現実だ。

「い…ヤだ、蓮…」

「勝手に口を開くな。貴様に拒否権は無い」

「…んでだよ」

「貴様は俺の所有物だからだ」

耳元に熱い吐息が掛かって膝が折れそうになる。
俺は俺である前に、こいつの所有物。
いつからこうなった?
俺達は同じチームで、喧嘩は絶えないけど仲間で、それぞれの夢のためにいずれ戦う未来だとしても今は、かけがえのない、、ずっとそう思っていたのに。
所有物。
色気のない傲慢な響きにすら喜びを感じる俺はきっとおかしくなってしまったのだろう。

「それでも出来んと言うのなら俺が手伝ってやろう」

「…ッ…嫌だ!」

奪われた手に手を重ねて強引に導かれる。無理矢理捻られた手首が痛い。剥き出しになっている俺の太腿に這わせられて身震いした。
体を強張らせて抗ったがやはり敵わない。羞恥に狂いそうで目頭がかっと熱くなった。

「俺が、おれがやる、自分で、だから離せっ!!」

身をよじって叫ぶ。体の奥が疼くのが恐ろしかった。
蓮はあっさり俺を解放して、正面のソファに再びどかりと腰を下ろした。「最初から大人しくそうしていればよかったのだ」と満足げな笑みを称えながら。

こんな異様な状況をもし誰かに見られたら俺は間違いなく生きていけないだろう。それほどまでにこのシチュエーションは異常だった。

信じたくもないが俺はそんな状況下で酷く興奮していた。変態だと罵られても言い返す言葉が思い付かない。

度胸とか勇気とかの言葉を今ここで使いたくはない。だがそろそろ腹を括らないとまた蓮の機嫌を損なうことになってしまう。先刻の手首の痛みを思い出してギリと奥歯を噛みしめた。

ぺらぺらの薄い布の裾に手を掛ける。そもそも男の俺がこんなものを身に付けていることからして変なのだ。

蓮の表情をちらりとうかがう。奴は俺がこうすることがさも当然であるかのように腕組みをして無表情に待ち構えていた。まったく羞恥心を煽るのが上手いというかなんというか。ニヤニヤしていてくれたほうがまだマシだった。

手触りの決してよくない安っぽい布地を両手で握り締める。掌が手汗で湿っていたことに初めて気が付いた。

目線は床に向けたまま、熱が首から上に集中していくのを感じながら、わなわな震える唇を一度噛み、薄く開いた。

濃紺のスカートを持ち上げる。


「ち、チラっしゃいませ」


散々履き倒した俺のぼろいトランクスが露になると蓮の眼が僅かに細められた。ああ期待に添えられたようで何より。







『給*与明細』って番組でパンチラ喫茶なる店が紹介されていてかっとなって書いた。
メイドでもメイドじゃなくても。




あきゅろす。
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