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切望
無双・直江、独白



友を助け出す為、屋敷中を探し回った。
なんとしても加藤清正よりも早く三成を見つけなければ、そう思ったのだ。
それはひとえに、三成が加藤に倒されると思っただけではない。
いや、確かにその危険も十分孕んではいたが。
何よりも友が刃物以外でも、傷付く姿を見たくなかったのかもしれない。


戦場と化した屋敷中を馬で、自らの足で駆け、ようやく探し当てた時既に側には片鎌槍を三成に向ける銀髪の虎の姿があった。
遠目から見ても目立つその三日月の様な刃は三成の喉元を確かに捕らえているのに、一向に牙を剥かない。
三成も三成で鉄扇を構えているにも関わらず反撃する気配すらなかった。
まるでそこだけ時間が止まった様だと思った。

それでも武器をけして下ろそうとしない二人を見、駆ける足を速める。

睨み合っている筈なのに、その表情はどこか頼りなく。
どちらもその様な顔をするくらいなら、しなければいい。
片意地張らずに義をもって愛を貫き通せばこの様な事にはならぬのに。

二人共、願うのは家の存続。
それなのに何故、どちらかが排除されねばならない?

家とはなんだ、そこに住まう者が欠けては意味がないではないか
それは綾御前様の言った事とも通ずると思った。
外観だけを護っても、中身を護らないなど、義に反する。
何故それが分からないのか。

大切な家族を討った者の苦しみを間近で見た。関わったのはほんの一時でその苦しみや悲しみは鱗片を見たに過ぎず計り知れない。
それでもその激情は痛いほどに伝わった。
普段片意地を張り弱味など見せぬ奴が疲弊した姿は正直いけ好かない奴であっても見ていられなかった程。

どちらがどちらかを討っても悔やむのは必定。
その様な事いくら覚悟があろうが、するべきではない。ただお互い苦しいだけだというのに。


とっさに二人の間に札を飛ばす。
「三成!助けに来た!」
「兼‥継」
その様な参り果てた姿、見たくなかったのに。

私では真に、友を救う事は叶わぬのだ。


三成を救い得る事が出来る存在は、三成に槍を向け、三成は共にありたいと望んだ相手に己が武器を突き付ける。

救う事は叶わずとも、今、命を助ける事は出来るならば私は三成が切願する相手であろうとも刃を向けよう。

愛を持って義を貫き通さんが為、私は私の護りたい者達を守り抜く

「加藤清正、貴様に三成は任せられん!」

愛する者に刃を向ける不義者には、決して!



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