パリエッタへようこそ
.

「沢田さん!遅いです!ペナルティーとしてぎゅってします」


手洗い場から出ると、染めてない髪にストライプのカチューシャをつけている女の子が腰に手を当てて待ち構えていた。
彼女もホール担当で、職場で一番テンションが高い月森瑠璃だ。
沢田と違い顔にはどこか幼さが残っており、行動や口調に子供っぽさを感じる。
月森は結構不思議なところがあり、普通の女の子なら喜ぶパリエッタの制服を断固拒否し、男性用制服を着用している。
学校の制服もズボンを履いていることから男子制服を着用しているらしい。

「する予定満々じゃん。やめてよね暑苦しい」
「あうー沢田さん冷たいです。でも好きです!!」
「っ!!っちょ、や、止めなさいよ!!」

そして彼女は沢田が大好きなのだ。
なにかと理由をつけては後ろから抱き、3分は離さない。
始めのころは戸惑ったが今では慣れたものだ。
まぁ女の子同士だし目に毒ではない。

「ツンはクリアーしたので次はデレですね。デレていいんですよー」
「お前、意味分かんないよ!!」

このやり取りもなんだか微笑ましく思うようになった。
慣れって恐ろしい。

「月森さん、沢田さん困ってるよ。」
「あ、田中さん入ったんですね。今日もよろしくです」
「…うん。よろしく」

沢田さん以外アウトオブ眼中なのは相変わらずのようだ。まぁいいけど…
それより月森さん、沢田さんが好きなのは分かったからそろそろ離してあげて。
先ほどから沢田さんから目でSOSサインがバシバシ送られてくるから。

にしても今日もテンション高いなぁ。また徹夜したのかな?さすがJK。若いっていいなぁなんて考えている内に沢田さんは月森さんのギュっギュ攻撃から抜け出してプリプリ怒ってた


…沢田さん、それが、その態度が月森さんを喜ばしてるんだよ。気付いて!


**********************



「そういえば、沢田さんと田中さん今日入った新人さん見ました?イケてるメンズ、略してぇイケメンでしたよ!!」

月森は腕の中から逃げた沢田を残念そうに見ていたが、ハッと新人について思い出したのか目を輝かせながら報告してきた。

「あーあたしまだ見てない」
「右に同じく。というか新人が入るなんて知らなかったよ俺」

沢田は良いなぁあたしも早く見たいなどと小さくごちりながら月森の様子を見ている。

「ちょーカッコイイですって!!しかもあたしの4歳年上!!」
「てことは俺と同級か年上かって感じなんだね」
「そういえば田中さん、20歳でしたっけ」
「そうだよー」
「年齢近いし、男性だし、あの人と仲良くなれるといいですね!」
「そうなれるように頑張るよ」


女の子に囲まれて仕事するのはもちろん嬉しいのだがたまに話についていけない時があるため、歳の差を感じていたが…
そうか新人は同い年で男か、楽しみだ


「あのーすみません…」
沢田と月森が新人についての話に盛り上がっていると、後ろから控えめに声が掛けられた。


[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!