パリエッタへようこそ
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「田中さん今日もよろしくお願いします」


手を洗うために下を向いていた顔を上げると、そこには髪を栗色に染め、おしゃれなシュシュで長い髪を頭の上の方で束ねている女の子が立っていた。
同じホールで働いている沢田遥だ。
実年齢より大人びて見えてしまうのは彼女の放っているオーラというやつだろうか。

「俺の方こそよろしくお願いします。沢田さん、今日も入り早いね」

手洗いを素早く済ませ、備え付きのペーパーで水気を拭きながら沢田に向き合う。

「学校、早く終わったんです。それに今日から新しい人が入るって話聞いて…」

沢田の表情は楽しみ半分、不安半分というような笑みが浮かびあげられていた。

「へーそうなんだ。入るってキッチン?」
「それがホールみたいなんですよ」
「…キッチン担当なかなか増えないね。佐伯さん残念がってそう」
「さっきキッチン担当が増えねぇって嘆いてましたよ。忙しいんだからキッチン増やせばいいのにって思いません?」
「はは、じゃあ後で俺たちが応援に行こうか」
「はい!行きましょう!!」


バイト仲間の沢田さんは、麗しのJKというやつだ。
折角の女子高生なのだからもっとはっちゃけてもいいと思うのだが、彼女はまったくそういうのに興味がないらしい。バイト熱心でこの歳でめずらしい落ち着いた子だった。
そこがまた彼女を大人びて見せる要因の一つだと思う。
実は、俺がここで働き始めた時にいろいろ教えてくれたのが彼女だったりする。
教え方は分かり易く丁寧だっだんだけど結構なスパルタで軽くトラウマだったり…


笑顔がとてもプリティーなのだが、



「あ、田中さん聞いてくださいよ!!今日学校で友達、というかただの知り合いが彼氏出来ないってあたしに相談してきたんです。そいつ外見ばっかり気にしてんのか白いケバケバの化け物になってあたし相手に上目使いでアピってくるんですよ。キモくないですか?可愛くねぇんだっつーの!テメェの性格に難があんだよ!つか、あたしは女なんですけどって言ってやりたくなりましたね。まぁ言わなかったですけど…やっぱり男の人ってそういう女が好きなんですか?」


落ち着いている彼女からほんとに発せられているのかと疑ってしまうような饒舌さとその話の内容。
そう、結構毒舌というか口がね、多少悪いのだ。
可愛い振りしてとは沢田さんのことだと思う。


「うーん…確かにそういう子が好きな人もいるよね」

曖昧な笑みを浮かべながら応えると、沢田は目線を俺から外し口を少し尖らせた。

「…やっぱりいるんですね。世の中腐ってる」

そういった彼女の瞳の奥にはかすかな怒りが揺らいでいるように見える。

「いや、でもそう人だけじゃないと思うよ?俺はあまり好きじゃないし…」
「もし、田中さんがそういう人好きって言ったらあたし口きかないです」

あう、心に130のダメージくらった
俺から外していた目線をもう一度向け何言ってんの?と言いたげな目を向けてきた。
毎日のように話してはいるものの、まだこの刺々しい言い方にはなれない。
冷たい目線も…ね。


「さ、沢田さん、ちょ、今のは…」
「何やってんですかー?仕事始めましょーよ」


うん、そんな男前なところが女子から人気がある理由なんじゃないかな?と思っても口に出せない年上な俺
悲しいとか言わないでくれ


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