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俺の心臓を返してくれ。/sh


何なんだあの目は。

あの大きくて澄んだ瞳に見つめられたら、何も考えられなくなる。
人の心を鷲掴みにする目。

あの凄艶な男にも困ったもんだ。

俺の理性のダムは決壊寸前だぜ。



まったく……


















俺の心臓を返してくれ。




















「…は?」

ハイドは、大きな目を更に大きくて見開いて、俺を見上げた。

こうやって、驚いた時に相手をじっと見つめるコイツの癖にももう慣れたけれど。

慣れはしても、動悸は抑えられない。

俺のこの“男前”な顔は、うまくこの動悸を隠してくれているだろうか。


「やっちゃんの心臓がどないしたん?」


そう、俺の心臓。

ハイドと知り合ってから、俺の心臓は俺の物じゃなくなった。

いつでもハイドの為に動いてる。
俺の意思なんか関係なしにバクバクドクドク鳴りやがって、煩いのなんのって。


今だって。


ゆっくりと瞬きを繰り返し、じっと俺を見上げるハイドの所為で、壊れちまいそうだ。


「俺の心臓はお前が握ってる」


そう告げると一層キョトンとした顔をしたこの天使のような男は、次の瞬間、笑った。


「もう、やっちゃんったら不器用なんだからー」

ムカ。

「…………何が」

その笑顔が可愛すぎてムカつく、ていうのは、もう既に末期なんだろうか。




「俺の事が『好き』や言うたらえーやん」





「……」

「たった2文字でええやないの」



「やっちゃんったら不器用なんだからー」


そう言った目の前の天使が、あまりにも可愛く笑うものだから、俺は言葉をなくしてしまった。



「……ハイドの馬鹿野郎…///」

「聞こえませーん」






…俺の心臓は、やっぱりしばらくは返してもらえそうにない。








(アンタはいちいち言う事が恥ずかしすぎるんだよ!)

(あはは、照れちゃってー)



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