都合のいい男/YH 「次はいつ会えますか?」 「会いたいと思えばいつでも。」 「じゃあ、明日は?」 「いいよ。」 「じゃあまた明日連絡します。」 「うん。」 会いたいと思えばいつでも、なんて。 そんな言葉に浮かされてるワケじゃない。 あれはあの人への当てつけだ。 彼が会いたいと思う時に会えないあの人への。 ハイドさんが俺に連絡してくる事は少ない。 あの人に会えない時、どうしようもなく寂しくなった時だけ。 それが判ってるから、俺は必死で会う約束を探す。 あの人にいつでも会えるなら、ハイドさんは俺を必要としない。 だから彼が俺を必要としてくれる時、俺は何を投げ出しても駆けつけるんだ。 もっと俺を必要として。 俺だけを見て。 あの人の事なんて考えないで。 そんな我が儘は言えない。 だって彼に捨てられてしまったら、俺は生きていけない。 ただでさえ、彼はいつも俺を利用している事への罪悪感に苦しんでいる。 「ごめんな、俺…」 「俺は大丈夫ですよ」 「…俺、がっちゃんが好き」 「…」 「いっつも、こんなんやめようって思うのに、っ」 「俺は大丈夫だから、だから、俺を捨てないで。」 「ごめん…ごめんなさい…っ」 判ってる。 彼の一番は揺るがない。 ガクトさんが一番大切な人で、俺はただの代用品。 「こんな風に、ヤスの優しいのにつけ込んで、こんなん最低や…」 でも、ハイドさんはまだ判ってないみたいだ。 つけ込んだのは俺の方だ。 ハイドさんの弱さにつけ込んで、こんな関係になって、悪いのは俺なのに。 優しいハイドさんは自分を責めてる。 だから本当は、ガクトさんに感謝しなきゃ。 彼が忙しいお陰で、俺にこんな役回りが出来たんだから。 もし彼が、仕事だとが全て投げ捨ててハイドさんだけの為に生きるなら、ハイドさんは俺を必要としない。 必要なのは愛しい人だけ。 代用品なんて要らない。 だからどうか、このまま都合のいい男でいさせて。 前 |