sayonara/GH
いつもの言葉。
いつもの風景。
僕の家から、愛する妻の待つ家庭へと帰るハイド。
彼を玄関で見送るのは、ありふれた場面だ。
…なのに。
「行かないでっ」
気付けばそう叫んでいた。
「どうしたのがっちゃん」
「……」
“さよなら”と告げて背を向けたハイドを、背中からぎゅっと抱き寄せた。
(なんでそんな簡単に離れていくの。)
理解はしてるんだ。
ただ、気持ちがついていかないだけで。
お互いに忙しくて、会う時間も限られていて、でも全てを投げ捨てて互いの存在だけで生きていけるほど、自分達はもう子供ではなくて。
―手放せないものが多すぎる。
“さよなら”なんて嫌いだ。
“またね”も、要らない。
―――また、なんて、いつ来るかも判らないのに。
そんな言葉は要らないから、ハイドの時間を僕に頂戴…?
「…判った判った。がっちゃんは甘えんぼさんやねー」
そう言って背伸びして僕を抱き締め返してくれるハイドが愛しくて、どうせならこのまま殺してくれたらいいのに、と、考えてはいけない事を思った。
(傷付きやすいお年頃。)
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