[携帯モード] [URL送信]
苦しい恋より、甘い行為をください。
「ぐっ…!」

突然髪を鷲掴まれて、低い呻き声が漏れた。


「アレにもその躰を開いたのか」
「…!?」


いきなりボクの部屋に不法侵入してきたと思ったら、この理不尽な暴力。
掴まれた頭皮の痛みに、会話どころではない。

「その綺麗な体を抱かせたのか。…俺が全て教え込んだその体を」
「…アスラン……。君と一緒にするな。彼はそんなんじゃない」

(あんな屈辱的な行為、君とだけで充分だ。あんなの、強姦じゃないか。)
口をついて出掛かった言葉を飲み込む。

そんなことを言ってしまったら、また朝まで意識ぶっ飛びコースに直行だ。

泣かされるだけ泣かされて、朝には手足の1ミリも動かせない。

それに、シンとはそんな関係じゃない。
確かに懐いてはくれているけれども、ただ弟が出来たみたいでほっとけないだけだ。

アスランは呆れたように溜め息を吐き、ボクの髪を掴んでいた手を離した。

「キラ…。好きな奴の前で男が考える事なんて一つさ」
「…?」
本当に意味が判らなくてアスランを見上げれば、更に信じられないというような表情を向けられる。
「!…ははっ。まさか気付いて無かったのか」

「……」

その、自分だけが何もかも知ってるような口振りに腹が立って、ただ睨んでやった。
顔が嫌みなほど整っているだけに、口角だけを吊り上げた笑顔が憎たらしい。
「アイツはお前を抱いて鳴かせたいんだよ」
「っ!!ほんっと、君って最低な人だな!」

よりにもよって、シンを引き合いに出すなんて。
確かに、アスランが何故かシンを嫌っているのは知ってるけれど。

「最低…?それはどっちだよ」
突然声音を変えたアスランに、反応が遅れる。
その地を這うような怒りを含んだ低い声に、肩をがびくりと動いた。
その時には既に、アスランに押し倒された後で、またあの行為が始まる合図なのだと、頭の奥底で理解した。

「俺の気持ちを知りながらあんなガキを側に置いてるお前は、最低じゃないのか」
そう言ってボクの首筋に舌を這わせたアスランは、怒っているのか悲しんでいるのか、感情が読めない。
「…ふっ…ん」
なにが『俺の気持ち』だ…。
ただ独占欲と嗜虐心だけでボクを抱く君に、どんな気持ちがあるっていうんだ。
「……っ君のソレは、愛じゃない、だろ…」
一瞬、行為を中断してボクを見た彼の瞳が、悲しげに揺れた気がした。
けれど、また行為はすぐに再開され、ボクは嫌がらせに彼の背中に爪を立てた。
「つッ!!…キラ。お前には、お仕置きが必要か…?」
もう一度ボクの顔を覗き込んだ彼は、またいつもの残虐な支配者のそれに戻っていた。


きっと、ボクの気の所為なんだ。
そうに決まってる。
彼はただの気まぐれでボクを抱いてるだけだ。


そうでなきゃ、この行為に対する怒りを、ボクはどこへぶつければいいんだ…。




この強引で甘く、激しい行為に溺れることでボクは、決して気付くべきではなかった真実に、蓋をした。




(この、卑怯者め…ッ)



あきゅろす。
無料HPエムペ!