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歪愛。










「キラッ!!」


ドアの開く音と共に目に飛び込んできたのは、宵闇の髪とエメラルドの瞳。
耳に響く、彼の澄んだテノール。
いつもなら心地よい声も、今はちょっと歓迎出来ない。
もう少しで夢の世界へ意識を手放せそうだったのに。

「五月蝿いよアスラン」
「…ッ!何だその格好は!」
ああ、とボクは自分の体に視線を落とす。

シーツに包まれた、生まれたままの姿。
おまけに、身体中あちこちに赤い鬱血の痕。
言うまでもなく、今ボクの目の前にいる、顔を真っ赤にして眉間に皺を寄せた青年のものではない。

「今回は不可抗力だよ。待ち伏せされてて…」
「今出ていった奴か!」

(ボクの答えは求めてないんだね…)
尋ねておきながらボクの言葉を遮る彼に、溜め息が零れる。
(そんなの、部屋の前で彼に会った瞬間に全て察してるだろうに。)

「そうだよ。キミがドアの前ではちあわせた彼。あのこの事はボクより君の方が知ってるだろ?ザラ隊長」

君の部下なんだから、と言外に告げてやれば、彼の眉間の皺は更に深いものになる。

「予想がつかなかったの?彼がボクを好きだって知ってたのに?」
「ッ!」

いつだってボクの所有者のような顔をする幼なじみ。
その整いすぎた顔が酷く憎く見えて、皮肉な呟きを漏らしてしまった。

「彼、ボクを愛してるんだって。アスランから解放してくれるって」
至極楽しそうな笑顔でそう告げれば、いつの間にかすぐ側に来ていたアスランにより、ベッドに縫い付けられる。

「ああ、君もシたいんだ?」
クスクスと笑いが零れる。

「…ッお前は『愛してる』って言う奴なら誰でもいいのかっ!?誰にでも抱かれるのか!!」
「そうだよ!誰でもいい!だから君もボクを抱いたんだろ!?」
何を今更言い出すかと思ったら。
つまり彼は、やはりボクの所有者でいようとするわけだ。
他の誰とも寝るななんて、それこそ本当に今更だ。
「っ!…このっ…!!」
「君がボクをこんな体にしたんだろ!?そうだよ!君の望み通り、ボクは男を誘って銜え込む体になった!」
ボクの周りのシーツを奪い去った彼の手が、止まった。
「いやだ…こんなのボクじゃない…助けて…ッもうボクを解放してよ…」
力の入らない指は、彼のシャツを掴む。
「みんな、ボクを好きって…でも君は違う…ッボクのこと、好きじゃないんでしょう…?でも、でも、ボクを抱くんだ……ど、したら好きになってくれ、るの…」

「…キラ…」

アスランの腕から力が抜けたのがわかる。
「君だけが、ボクのものにならない…」
みんなボクを好きだと囁くのに、愛してると告げるのに、君だけが…。
「ボクが、カガリの弟だから…?」
「ッ!!」
ボクに覆い被さっていた彼が、急に距離をとる。
「…だからボクを『好き』じゃないの……?」
「……ッ…」
彼の美しい瞳がボクから逸らされ、それがなんだか悲しくて、彼の頬に手を添えて戻した。

そして口付ける。


―君がボクを壊したんだ。責任を取ってよ。













「んふっ…、ぁあ……アス、…ン」
「キラ…っキラ……」
「…あぁ、ん……んっ…はぁ、」
「カガリの弟だからって、もう我慢しない…っお前、は…俺のものだ……!」
「ぁあああッ…もっと、ゆっくり…っ、アス…待っ、て……」
「…俺のものだ、…俺だけのキラ…」









(歪んだ愛が、ここに一つ。)



あきゅろす。
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