[携帯モード] [URL送信]
2




「おっかえりー、かっちゃん!」
「ああ」


オレは座ってた机から腰を浮かせて、かっちゃんに笑った。
教室の扉に片腕引っ掻けて気だるげに立ってるかっちゃんは、それだけでなんかオーラがある。
ボタンが上3つ外されたかっちゃんの学ランの胸元から、白いワイシャツ。
窓からの夕日を浴びて、なんだか綺麗だ。


「サッカー部とかまだやってっけど、バスケ部は今日部活もー終わりか?」
「俺は掃除しねえで先に上がった。せがまれて練習見に行ってやっただけだからな」


ったく、何が来てくれたらもっとやる気出るだよ、図々しい奴らだぜ。
そう言うかっちゃんの表情は柔らけえし、せがまれて何だかんだ言いつつ行ってやるあたり、後輩が大事なんだろうなと思う。


「つかいつまでぼおっとしてんだよ?」


腹減った、どっか寄るぞ。
そう言ってさっさと背向けて廊下歩いていっちまうあたり、ほんと俺様だよな、かっちゃんて!
オレはかっちゃんが部活行ってくるっつーから、帰りを待ってたんですけどね!
(いや、帰れって言われたのを俺が待ってるっつったんだけど!)


「待てってーかっちゃん!」


待たせるのはいいけど、待つのはダメ。
我が儘言うのはいいけど、言われんのはダメ。
そんな具合に、オレも普段の人付き合いでは、基本的に他人を振り回すばっかで振り回されることなんかあんまねーんだけど。
(つまりオレもなかなかに自己中なんだけど)

だけど、かっちゃんだけは、特別だ。


「うっせー。ちんたらすんな、チビ」
「チビっつったって、オレら2センチしか変わんねえじゃん!」
「それでも俺のがでけェだろ」


追いついたオレを、かっちゃんは鼻で笑う。

……ちょ、今の笑い方すげー俺様攻めっぽかったはあはあ。

俺トキメいちゃうよちょっと!
やめてほしーわ、ほんと。
俺かっちゃんだけはそういう目で見ねえって決めてんだから!
(ちなみにこれも、かっちゃん限定、特別なとこの、一つ)

なんでかっちゃんだけかって?
そんなの、愚問だね!


「かっちゃん、マジ歩くの速くね?」
「お前より足長いんだよ、しょうがねえだろ」
「っっむっかつくー!」


二時間も待たされたってワガママ言われたってこんな風にからかわれたって、さ。
かっちゃんは、オレのオンリー、だからだよ!
(やだオレちょー健気!)






Only LOVE !









「そういやお前、さっき何見てたんだ?」


下駄箱で靴履き替えながら言われた言葉。
オレは踵を踏み潰した革靴をひっかけるみたく履いて、かっちゃんを見た。


「さっき校庭熱心に見てただろ」


なんかおもしれーモンでもあったかよ?
そう言いながらかっちゃんはオレの隣のロッカーに上履きを突っ込む。
あー、と言ってから、オレは思わずニヤニヤ。
そんなオレを、気味悪そうに見るかっちゃん。


「ニヤニヤしてんな、気持ち悪ィな。……んだよ」
「えー? ……っとねー、野球部見てー、サッカー部見てー、女の子見てた!」


やー、やっぱ最高だよ、先輩後輩とかってさ!
オレ的に高校球児ってロマンいっぱいなんだよね!
ちなみにサッカー部員にはエロスいっぱいつまってるみたいな? はっはっはっは。
王道サイコー!


「……まァたそーゆー話かよ」


はあ、と溜め息まじり苦笑まじりに言われた言葉に、オレは笑みを深くした。
かっちゃんはぜってー、オレのことキショイとか言わねえし、引かねえ。
俺様だしジコチューだしすぐ殴るし、口も態度も悪ィけど、かっちゃんのこういうトコ、オレは好き。









[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!