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* * * * * *



学校を出て家で私服に着替えると、俺は電車に乗り、とある繁華街のホテルに行った。

うす汚いホテルのフロントの、やる気のなさそうな男に、先に相手が入ってるはずだ、とその相手の名前を告げる。
男は俺をじっとりとした目で見てから、手元の紙を見て、部屋番号を教えてくれた。
どうも、と言って部屋に向かうためにエレベーターに乗った時、気付いた。
そう言えば、ここに来るとき、受付は必ずあの男だったな。


安っぽい廊下、安っぽい内装、安っぽい扉。
その一つの前に立ち、俺は扉をノックした。
コンコン、と空虚なおと。
俺は、何も言わなかった。


「よぉ、ワカ」


がちゃ、と音をたて、扉があく。
中から出てきたのは、まだそんなに俺と変わらない歳の、すらっとした体型の、野性的な端整な顔立ちの……男。


「ハスミ」
「入れよ。待ちくたびれたぜ」


ふー、と煙草の煙を吐き、シニカルに笑う様は、ムカつくくらい絵になる。
俺は招かれるまま中に入り、その後ろでハスミが扉と鍵を閉めた。
安っぽい部屋の中は、ハスミの煙草の匂いが充満していた。


「くっせ……おい、煙草吸うときは窓開けるなりなんなりしろよ」


よく意外がられるけど、俺は煙草を吸わない。だから、この独特の匂いには抗体がなくて、そう眉を寄せた。
靴を脱ぎ、窓に近付き窓を開ける。
繁華街の汚い空気が、部屋に流れ込んできた。


「ああ……お前煙草吸わねえんだっけ? 意外」


くつくつと笑いながら、ハスミも俺に近付いてきた。
いつものことながら最後の意外、って言葉がなんかムカついて、俺はハスミを睨む。


「うっせえよ。だいたい苦いだけだろ、そんなもん」
「くっ。お子ちゃま」
「んだと薬中」


煙草だって、ドラッグみたいなもんだ。
いや、下手なドラッグより質が悪い。
そんなもんより、ずっと依存性が高いから。
一度味わったら、もう絶対やめらんねー。
それを上手そうに吸ってるこいつは、俺からしてみたら、立派な薬中だ。


「……味見してみるかよ?」
「あ?」


窓の外をぼおっと見ていた俺に、ハスミがそんなことを言う。
俺は、ハスミを見た。
そして、あ、と、思う。


「苦いだけかどうか」


ハスミは笑っていた。
獣じみた狂暴な目をして。
男、の、顔をしていた。


「くせになるかもしんねえぜ?」


煙草を灰皿に押し付けて、俺にもっと近付いてくる。
何センチか高い位置にあるヤツの顔を見上げて、俺は黙っていた。
ハスミは、俺の顎に冷たいその手を添えて、空いている方の手で俺の腰を撫でる。


「っ、」


たったそれだけの刺激なのに、快楽を覚えた体は貧欲にそれに反応し、ハスミの狂暴な目に体が帯びていた熱は、沸騰したように高まる。
そんな俺を見透かしているのか、ハスミの手が、ゆっくりと、臀部を撫でる。


「ぁ、ハスミ……っ」


思わず、上擦った声がもれた。ハスミの服を掴んで、縋る。
そんな俺に、ハスミは、嘲笑う。


「なんせ、」
「あ、ぁ……」


それ、が、ハスミの熱く充血したそれ、が、お互いの服越しに腰に擦り付けられる。
どうしようもなく感じて、はやくはやくそれが欲しくて、俺は訴えるようにハスミを見た。
緩く自分の腰が動いてるのに気付いて、恥ずかしくて、でも、どうにかなっちまいそうに、いい。


「男とのセックスに夢中になっちまうような、インランな体だからな?」
「っん、は……」
























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あきゅろす。
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