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たいせつなものほど、俺はいつも、こわしてしまうから。






「ん、……ぁ、っ」


俺の下で、先輩が、甘い声をあげる。
押し殺されたそれはどう聞いても男のものなのに、俺は異様なほど、興奮していた。
乱暴に突き上げてみると、白い喉元を晒しながら、彼は大きく体を仰け反らせたけれど、やっぱり声は一度短く漏らしただけで、それ以上は、無理矢理唇を噛んで押し殺していた。

何度体を重ねても、必ずそうだ。
彼は、その声を、極力殺そうとする。


「っ、……気持ちい……?」


耳元で低く囁くと、ぶるりと体を震わせる先輩。
ぎゅっと固く目を閉ざし、目を開けると、俺を睨みつけてきた。
(あ、その顔、すき、)


「んっ、は……し、ね……っ」
「………違うデショ?」
「あ、ッく……!」


可愛くないことを言う先輩のイイトコロを、思い切り抉りあげる。
それでも声を殺す先輩に、俺は小さく笑った。


「“気持ちいい”、でしょ?」
「っ、……!」


「ね?」と優しく笑えば、先輩は一瞬――本当に一瞬だけ、辛そうな顔をする。
その表情に、俺の中のどこかが大きな軋みを上げた気がしたけど、気付かないふりをした。
先輩のその表情もすぐに消えてしまったし、不快な軋みも、すぐにどこかに流れたから。

先輩は、誰にも男前だと評されるその顔を快楽に染めて、熱っぽい目で、俺を見た。
そして、


「カズ……っ」


熱い吐息で、そう、俺を、“呼んだ”。


「カズ、……っ、気持ち、い……っ」
「……イイコ」


俺の言うことを聞いて、きっと言いたくないだろうことを言う先輩。
自然と少し、眉が寄る。
それを隠すように、優しく先輩の髪に口付けて、それと裏腹に、優しさの欠片もない律動で、彼を揺さぶった。


「っ、ちょ、馬鹿ッ、はや、い……! ンっ、は、っ!」
「……っ」


彼の抗議なんて聞かない。
彼の声自体聞きたくなくて、でも唇を塞ぐことは俺には出来なくて、俺はただ、この行為に没頭し、目を閉じた。
早く、早く、早く。


「っ、カズ、カズ……んん、ん、っ」


相も変わらず押し殺された声に、さっきよりも甘い色がまじって、俺は彼の絶頂が近いことを悟った。
カズ、そう彼が喘ぐ度、何かが、
(何かが、俺の中で、音をたてて、)


「ッ、あっ、…っう、く……!」


内壁がきゅう、と収縮し、俺自身を締め付ける。その熱くてきつい締め付けに、自然と腰が早くなる。
彼の絶頂も、そして当然、俺の絶頂も近くて、俺は促すように、最奥を突き上げた。


「ぁ、――ッ!」


先輩が小さく喘ぎながら、達する。
そのひどく煽情的な表情に煽られて、また限界がぐっと近付いた。
彼が迎えた絶頂によってさらにしめつけがきつくなって。
目の前が、白く染まっていく。


「せ、……っ」


達しそうになった瞬間、先輩――思わずそう、彼を呼びそうになった。
その声を無理矢理飲み込んで、俺は、呼ぶ。
いつものように、彼を、傷つけるために。



「、ミキ……!」
「――……っ!」



彼の体が、その名前に強張った。
けれど俺は、全く気付かないふりをして。
呼ぶと同時に、彼の中で、そのまま達した。




(        、)




本当に呼びたかった人の名は、呼べないままに。































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あきゅろす。
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