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03



小屋の中で、早朝に目を覚ますと、ショウがいない。
「ショウさん、?」少しぼおっとして、それからはっとする。
「ショウさん!」小屋を飛び出す。周り見ても見当たらない。もう一回叫ぼうとすると、海に見つける。安心するのも束の間、見ていたその背中がどんどん中に入っていく。胸がざわってなって、走り出す。サンダルが邪魔で脱ぎ捨てる。
「ショウさん!」水辺まで来たとき、ショウすでに胸のあたりまで入っている。そして、ザパンと消える。ぞっとして。
「ショウさんっ!」泳げないのに入っていく。ショウの腕を掴んで引っ張る。ショウがでてくる。ぱっと出てきたショウ、髪を書き上げ少しうつろな目でぼおっと言う
「……レイシ?」
「っなに、……なに、やってんすか……」
「……海ん中、入ってみたくなって」ぼおっとして。ふと視線を落として
「海ん中って、どうなってんだろうって、思ったんだけど……でも、やっぱ、ダメだな。目、開けてらんなかったわ」
「……」ほっとして、思わず腕をとったまま力こめてしまう
「いてえよ、なんだよ」
「……わかんないっす……」声が震えてる。
「あんま遠くにいくと、さらわれます」
「……さらわれてえ、なぁ」笑って
「なあレイシ、おまえなんでおれのこと、さらったの」
「……わかんないんです……」
「だろうな」笑って。でもレイシ、頭の悪い自分がほんとに嫌になって
「なんでおれ、こんな、馬鹿なんすかね……自分のことも、わかんねえなんて、……っ」
「ふ。本当に、馬鹿だな、おまえは」優しく笑う
「……なあレイシ、さみいなあ」
「……冬の海入ったら、当たり前す……」
「そうだよなあ」
「海、眩しいなあ」
「……」
「目、焼かれそう」と言って目を伏せる
「……ショウさん、」もっかい「おれと逃げて」って言おうとして、言えなくて、口を閉じる。切なくて、ショウの肩口に額を押し付ける。腕掴んだまま。それを悟って、ショウ、いつもどおりの声で言う。
だから、その時あの人がどんな顔をしていたか、オレには、わからない。
「……レイシ、やっぱさ、戻ろう」
「…………」震えている
「お前、父親なんだから。女もガキも、ちゃんと守れなくて、どうすんだよ」
「……」
「オレも、やらなきゃいけねえことあるからよ。……なあ、」
ぐっと肩を押して、体が離れる。レイが顔を上げると、ショウが笑っている。海の光に溶け込んで。
「戻ろう、レイシ。おれとおまえとじゃ、一番おわりになんか、行けっこなかったんだよ」
「……ショウ、さん」
マサトさんとは呼べなかった。オレはこの数日後、彼女と腹の中のこどもをつれて、追われるように生まれた町を後にした。






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