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部誌提出作
白黒予想迷走探偵注意報A
汚い、というのが現場の第一印象だった。
現場の真ん中に黒いペンキの上に白いペンキがぶちまけられ、ペンキの缶が二つと長い糸と何故か目覚まし時計とパナマの帽子が転がっていた。パナマの帽子は所々ペンキで汚れていたが、被れない事はないだろう。黒いペンキの所だけ足跡がついている。部屋の端の方には絵画があり、黒い布が掛かっていた。そうは言っても文化祭の準備期間だ、壁画までは布は掛かっていなかった。
「さて、そいじゃあ事件の説明をするよ。朝、事務員さんが見回りをしていると美術室の辺りで目覚ましの音が鳴り響き、物が落ちる音がした」
天井には絵を掛ける金具がついている。
「美術室に行くと既にこの状態になっていた。昨日の放課後に見回りに行った時にはなんの異常も無かったみたい」
俺は黙って現場を見ていた。黒いペンキは完全に乾いている。白いのは所々湿っている。黒いペンキが完全に乾いてからかけたのだろう。
「それで、犯人の目星はついているのか?」
「一応。二年の柩目羊(ひつぎめひつじ)って言う美術部員なんだけどね、最後まで一人でいたらしいのさ」
と、不意に声が聞こえた。
「あ…あの、」
振り返ると眼鏡をかけた少年がいた。
「羊くんじゃないですか!」
話をすれば、か。茶色がかった短髪。いかにも頭が良さそうな感じ。
「り、リリスちゃん」
「知り合いなのかいっ?」
「はい。同じ組なんですよ。どうしたんですか?こんな所に用があるなんて」
「え、絵を描きに来たんだ。ここじゃないとお、落ち着かなくて。り、リリスちゃんは?」
羊は怯えているのか、挙動不審に辺りをきょろきょろしていた。しかもどもってる。怪しいな、とか思っていたらリリスに耳打ちされた。
「羊くんはいつもおどおどしいますから。疑われて挙動不審になってるのか、怪しいぜ、とか思わないで下さいよ」
「もう遅い」
怪しいって思っちゃったじゃないか。
リリスは何ともなかったかのように羊に答えた。
「うふっ、今日の事件の現場を見にきたんです」
「そ、そうなんだ」
そう答えて羊は黒い布を取り、道具の準備をし始める。相変わらずびくびくしているので、事件の事を聞いて動揺しているのかどうかは分からない。やがて羊は絵を書き始めた。
「上手ですねー」
「そ、そうでもないよ。こ、こんなのみ、皆描ける」
羊の絵は朱色の背景に何だかよくわからない物が描いてあった。抽象絵とかいう絵だろう。よく分からないが上手いということは分かった。
「俺に芸術を見る才能はないらしい。それじゃあ話を戻そうか。リリス、美術室を調べて分かった事は?」
「私ですか!?えーっと…犯人さんは足の大きさが裕さんと同じ24.5で…?あ、パナマの帽子が落ちているって事は犯人は庄太郎さんじゃないですか?」
「…まったく、助手を退職させたいぐらい分かってないじゃないか。庄太郎がパナマの帽子を手放す訳ないじゃないか。ましてや落とすなんて。足の大きさも違うし。日陰、美術室を調べて分かった事は?」
「おう!まずペンキが灰色に混ざってないから、かける時間に差がある事。多分黒いのは事務員さんの見回りの後にかけたんでしょ。で、白いのは朝に何らかの方法で。後、確実にとは言えないけど、犯人は美術部員なんだよね」
「うん、日陰を助手にしたいぐらい完璧」
「記者たるもの観察眼が鋭くなくっちゃねっ!」
俺は本気で日陰を助手にしようか考え、日陰は誇らしげにしてる中、リリスだけが話について来れずに困惑していた。
「何で犯人が美術部員なんですか!?」
俺がそれに答えようとした時、赤空葉菊が入ってきた。
「ほら、最終下校時刻ぎりぎりだぞ。さっさと帰れ」
早く帰って居酒屋に行きたいんだ、と何とも理不尽な事を呟いていた。
「あれ、羊ちゃんもいるのか。相変わらず絵に熱心だな。それに挙動不審。おら、自信を持て!」
赤空葉菊はそう言うと、羊の両頬をぷにぷに動かした。
「両頬をぷにぷにして自信を持つとは思わないんだな」
「気分だ。ほら、さっさと帰れ」
日陰の言葉に赤空葉菊ははっと思い出したように言って、俺達の首根っこを掴んだ。
そしてそのまま引きずられ、強制下校。

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